野菜やナッツに自然に含まれるシュウ酸は、体内でミネラルと結合し結晶化する反栄養素です。
腎臓結石、尿路結石が一般的ですが、シュウ酸塩の結晶は体内の様々な組織に蓄積します。
シュウ酸についてよく知らないという方は、こちらの記事を先にご覧ください。
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自閉症患者は例外なく体内に高レベルのシュウ酸塩蓄積が見られ、シュウ酸塩を排泄する食生活に変えることで症状が改善したという報告があります。
シュウ酸塩の排出の方法はこちら。
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この記事では、シュウ酸がどのように自閉症に関わり、低シュウ酸ダイエットでどのような改善が見られるかについて説明しています。
自閉症ではないお子さんをお持ちの方にも、子どもの食生活を考える上で参考になると思います。
自閉症児の頻尿
スーザン・オーウェンスさんは、シュウ酸と自閉症の関係を調べている研究者です。
自閉症児を調べた結果、共通していたのが、
●頻尿で1回の尿量が少ない(1日に約50回排尿する児童も。)
●下痢や胃の痛みなどの胃腸症状がある
●排尿時に痛みがある
ということです。
低シュウ酸食で症状が改善
さらに共通していたことは、低シュウ酸食に変えると、子ども達の認知、学習、運動能力が向上したことです。
また、自傷行為などの異常な行動も減少しました。
自閉症の子ども達の3分の1以上は、腎臓結石の発生を引き起こす遺伝性疾患を持つ人達と同じくらい高いレベルのシュウ酸塩の蓄積が見られます。
※この子ども達は、結石に関連した遺伝子疾患は持っていません。
自閉症児とカンジダ
自閉症児は、腸内でのカンジダ菌の異常増殖が見られることも一般的です。
体内の糖アラビノースレベルが高いことはカンジダ異常増殖のサインになりますが、自閉症の子どもはこの値が自閉症ではない子どもに比べ非常に高い傾向があります。
抗真菌薬ナイスタチンによる治療でこの糖アラビノースレベルが下がり、
●多動
●アイコンタクトの欠如
●攻撃的な行動
など、自閉症で一般的な症状の改善が見られました。
アスペルギルスやカンジダ・アルビカンスなどのカビや真菌は、シュウ酸を生成することができます。
鍾乳石が形成されている洞窟などでは、壁に黒カビがたくさん存在し、シュウ酸カルシウムから成る鍾乳石を形成しています。
肺のアスペルギルス感染症を患った人々の肺からもシュウ酸塩の結晶は確認されます。
このことから、カンジダ症、真菌症が体内でシュウ酸塩の結晶の形成に関わっていることが予想されます。
シュウ酸塩は脳にも蓄積する
シュウ酸塩が蓄積するのは腎臓だけではありません。
シュウ酸塩は体じゅうの様々な組織に蓄積し、血液脳関門をも通り抜けます。
尖った角をたくさん持つシュウ酸塩の結晶は、蓄積した部位の組織を物理的に損傷します。
シュウ酸がなぜ自閉症に大きく関連しているのか?
●酸化ストレス
●慢性炎症
●ミトコンドリア機能障害
これが自閉症患者の脳の発作に関連する領域で一般的に見られ、そこにはシュウ酸塩が発見されます。
自閉症児のシュウ酸塩レベルの検査
2012年の研究で、自閉症児の体内のシュウ酸塩レベルは、正常な子どもに比べ尿中ので2.5倍、血漿中で3倍高いことがわかりました。
興味深いことに、尿中の高シュウ酸塩レベルは必ずしも血漿中の高レベルと相関していませんでした。
1人の子どもは尿中レベルが高いかもしれませんが、血漿は高くありません。
別の子どもは血漿レベルが高いかもしれませんが、尿中レベルは高くありません。
このことから、現在行われているシュウ酸塩レベルの指標として尿中レベルのみが使用されていることは問題であることがわかります。
自閉症に影響するシュウ酸以外の要因
自閉症の症状の重症度には、シュウ酸塩レベル以外にも考慮しなければいけない要因があります。
●抗生物質の使用
●食生活
●発作歴
●胃腸疾患の有無
自閉症児は抗生物質の使用率が高く、腸内環境の不均衡が見られる傾向にあります。
また、発作に苦しむ自閉症児は多く、シュウ酸塩が発作を引き起こしている可能性があります。
自閉症と腸内環境
腸内細菌叢の不均衡と自閉症は関連性があると言われていますが、これはシュウ酸分解菌「オキサロバクター・フォーミジェネス」の数とも関連がありそうです。
オキサロバクター・フォーミジェネスは母乳には含まれませんが、乳酸菌やビフィズス菌が存在し、乳酸が十分にある環境で繁殖します。
京都大学学術情報「ヒト腸内シュウ酸分解菌に対する乳果オリゴ糖経口投与の効果」
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こちらの参考資料によると、
ビフィドバクテリアム・アドレセンティスの一部の株もシュウ酸塩分解特性があり、
●ビフィドバクテリアム・インファンティス
●ラクトバチルス・アシドフィルス
●スタフィロコッカス・サーモフィルス
は、オキサロバクター・フォーミジェネスとは違う機序でシュウ酸塩分解能力があると考えられるそうです。
腸内細菌叢の不均衡によりこれらの菌が不在の腸では、食事から摂取したシュウ酸の影響がより大きくなることが予想されます。
自閉症とビタミンB6欠乏症
ビタミンB群は、肝臓の代謝に関わる栄養素です。
●B1(チアミン)
●B2(リボフラビン)
●B5(パントテン酸)
●B6
●B7(ビオチン)
●B9(葉酸)
●B12
●ニコチン酸アミド(ナイアシン)
など、それぞれが肝臓の代謝、糖質や脂質、タンパク質などをエネルギー源に変えるプロセスに関わっています。
ビタミンB6欠乏は自閉症患者に一般的であり、これが肝臓で代謝の副産物として生成されるシュウ酸レベルを上げる可能性があります。
ビタミンB6欠乏の状態では、低シュウ酸食にしたとしても、体内のシュウ酸レベルは下がらない場合もあるということです。
ビタミンB6は、システイン、グルタチオン、タウリン、硫酸塩の生成に必要なため、自閉症患者のビタミンB6サプリメント(またはビタミンB群のサプリメント)の摂取は症状を改善させる可能性があります。
自閉症児の低シュウ酸ダイエット
スーザン・オーウェンスさんが関わる研究で、自閉症児の低シュウ酸ダイエットによる変化を観察したものがあります。自閉症児対象者7名の尿を排尿のたびにサンプルを摂取し観察されました。
これにより自閉症児の尿中シュウ酸塩レベルは、一日の特定の時間に高くなることがわかり、その時間帯は排尿に痛みが伴う時間と一致していました。
低シュウ酸ダイエットが始まると同時に変化が見られます。
排尿時の痛みを訴えていた児童は、塩分多めな食事が大好きなことと、高シュウ酸塩食品である柑橘類の皮を欲しがり、頻繁に食べていました。
低シュウ酸ダイエット開始後、この児童の排尿の問題は改善、食事に追加で塩を振ることも無くなり、母親を驚かせました。
また別の児童は、低シュウ酸ダイエット開始後、小さい頃から続いていた慢性の下痢が急速に改善しました。
この児童は、SCDダイエット(特定の炭水化物を避ける食事療法)や他の治療を試した経験がありましたが、どの方法よりも低シュウ酸ダイエットが一番効果を示しました。
さらに低シュウ酸ダイエットを続けた数週間後、この児童はセラピストや教師など周りの人からも改善を指摘されるくらい会話、運動能力、認知力も目覚ましく向上しました。
それまでずっと見られた自閉症特有の行動が消えてきて、身長も2ヶ月で5cm伸びました。
まとめ
シュウ酸塩が自閉症にどのような影響を与えているかについて説明しました。
自閉症患者が低シュウ酸ダイエットを行うことにより、
●酸化ストレス、炎症の原因を取り除く
●腎臓結石、排尿時の痛みを取り除く
●グルタチオンの枯渇を防ぐ
●消化器系の機能を改善させ、シュウ酸分解菌を増やす
このような作用が期待できます。
健康な腸は、シュウ酸を摂取してもあまり吸収せず、吸収したシュウ酸も腸内細菌によって分解されます。
低シュウ酸ダイエットを行った自閉症児の親は、児童の症状の改善から、高シュウ酸の影響を実感したと報告します。
低シュウ酸ダイエットのやり方については、こちらの記事をご覧ください。
↓
・自閉症児の親、家族
・小さい子どもを持つ親、家族