アトピー性皮膚炎の塗り薬、喘息の吸入薬など、アレルギー疾患に対して処方されるステロイド。
このステロイドの副作用により副腎という臓器が機能しなくなり、副腎疲労という症状を引き起こすことが報告されています。
一般の医療ではあまり認識されていない副腎機能不全と副腎疲労。
どういう症状で、なぜ起きるのでしょうか?
ステロイドの使用はどのように副腎に影響するのでしょうか?
副腎とは?
副腎の構造
副腎は、腎臓の上に位置する小さな臓器です。
副腎は2層構造をしており、副腎皮質と副腎髄質に分かれています。
副腎の機能
副腎はホルモンを分泌します。
副腎皮質の機能
副腎皮質は、コルチゾール、アルドステロン、アンドロゲンという3種類の副腎皮質ホルモンを分泌します。
●コルチゾール
糖質コルチコイドの一種で、ストレスが加わると分泌されるホルモンであることから、「ストレスホルモン」とも呼ばれています。
コルチゾールは、糖質や脂質、たんぱく質などの栄養素の代謝を促進します。
また、コルチゾールは抗炎症作用や免疫抑制作用にも関わっています。
●アルドステロン
鉱質コルチコイドの一種で、主に塩分や水分、カリウムのバランスを調整しています。
アルドステロンの過剰分泌は高血圧を引き起こし、欠乏は不整脈、高カリウム血症、低血圧などを引き起こします。
●アンドロゲン
アンドロゲンは男性ホルモンの総称です。
女性の場合、アンドロゲンがエストロゲンという女性ホルモンに変換されます。
副腎髄質の機能
副腎髄質は、アドレナリンとノルアドレナリンという2種類の副腎髄質ホルモンを分泌します。
●アドレナリン
不安や緊張、興奮、怒り、恐怖といったストレスによって分泌されるホルモンで、交感神経に作用して心拍数や血圧を上昇させ、危機的な状況に心身を対応させる神経伝達物質としても働きます。
●ノルアドレナリン
アドレナリン同様、脳内で分泌される 神経伝達物質の一つです。
アドレナリンの前駆体でもあります。
アドレナリンが肉体に影響をあたえることに対し、ノルアドレナリンは精神に影響を与えます。
副腎疲労の原因
副腎疲労の原因は、主に過剰なストレスです。
具体的な例は、以下の通りです。
●過密スケジュール
●重労働
●非現実的な期待
●ネガティブなセルフトーク
●不健康なライフスタイル
●不健全な人間関係
●うつ病
●トラウマ
●汚染物質
●長期投薬
ストレスが過剰な状態でストレスホルモンが分泌され続けると、副腎の機能が弱まってきます。
ストレスに加え、
●不健康な食生活
●慢性炎症
●睡眠不足
などが、副腎機能不全を悪化させます。
ステロイドの機能
ステロイドは、体が生成する自然なステロイドホルモンと、それと同じ作用をするように人工的化学的に合成されたステロイド剤があります。
ステロイドホルモンは、その機能から、性ホルモン、糖質コルチコイド、鉱質コルチコイドなどに分類されますが、その作用は様々です。
ステロイド剤は、炎症を減らし、免疫系の過剰反応を抑制し、ホルモンの不均衡を助けるために使用されます。
(ここではアスリートやボディービルダーが使用するパフォーマンス向上薬としてのステロイド剤とは別のステロイド剤になります。)
体内で即効性があるため、突然の重篤なアレルギー症状の治療にも使われます。
ステロイド剤の主な使用例
●喘息
●アレルギー
●湿疹
●じんましん
●乾癬
●慢性閉塞性肺疾患(COPD)
●炎症性腸疾患(クローン病や潰瘍性大腸炎)
●多発性硬化症(MS)
●ループス
●アディソン病
●関節リウマチ
臓器移植から回復の処置に使用されるケースもあります。
ステロイド剤の形態
●タブレット、錠剤
●カプセル
●目薬
●ローション、クリーム、軟膏、ジェル
●鼻腔スプレー
●マウススプレー
●注射
ステロイド剤の機能
ステロイド剤は、副腎皮質から分泌されるコルチゾールなどのホルモンを模倣した作用を示します。
ホルモンを活性化させることにより、体内の炎症を活性化する原因となる免疫系を抑制します。
ステロイド剤の副作用
ステロイド剤の長期使用には、次のような副作用があります。
●にきび
●体重の増加
●あざ
●うつ病を含む気分障害
●高血圧
●糖尿病
●骨粗鬆症
●白内障
●緑内障
●肝臓障害
●副腎疲労
●一部の薬との拮抗作用
短期使用には、次のような副作用があります。
●睡眠の変化
●気分の変化
●食欲の変化
●体重増加
●体毛の異常な成長
●吐き気
●血圧と血糖値の急上昇
2017年の研究では、ステロイド剤の短期使用が敗血症、血栓、骨折のリスクを高めることが示されています。
ステロイド剤の副腎への影響
コルチゾールは体がストレスに反応して感染症から回復し、血圧と代謝を調節する作用をします。
アルドステロンは体内の塩、カリウム、水の適切な量を維持する作用をします。
これらのホルモンはストレスに対抗するために重要なホルモンで、十分に副腎皮質から分泌されていない状態の際、ステロイド剤を使用し機能を補います。
しかし、ステロイド剤の使用を止めた後も、副腎の機能が回復し自然なホルモンを生成するまでに時間がかかることがあります。
副腎機能不全に陥るリスクは、ステロイド剤の使用期間、使用量、使用形態により異なります。
●使用期間
長期ステロイド治療を受けた喘息患者の約27%と比較して、短期ステロイド治療を受けた喘息患者の1%強が副腎機能不全を発症しました。
●使用量
ステロイド剤の最低用量で喘息患者の約2%のみが副腎機能不全を経験したのに対し、最高用量で喘息患者では約22%でした。
●使用形態
副腎不全のリスクは吸入ステロイド剤では約7%、経口薬を含む他の形態のステロイド剤では約44%であることがわかりました。
ステロイド剤使用後の副腎疲労は頻繁に起こり、ステロイド剤は副腎のコルチゾール産生能力を低下させます。
副腎機能不全を確実に避けることができる投与形態、投与量、治療期間、基礎疾患はないようですが、高用量および長時間の使用が最も高いリスクを与えるということがわかりました。
ジョンズホプキンス病院のロベルト・サルバトーリ博士のコメントは以下の通りです。
ステロイド剤の高容量の使用、または3週間以上の使用は、副作用のリスクが高まります。
ステロイド剤を処方する医師は、通常、内分泌科に精通していないことが多く、副腎機能不全の症状を認識していません。ステロイド剤を常用する患者は緊急の手術時などに備え、副腎機能不全である可能性がわかるように、医療用識別ブレスレット、またはネックレスを着用すべきです。
副腎機能の回復のために
副腎機能不全によりホルモンが生成されない状態は、副腎疲労の症状につながります。
●副腎疲労の症状の例
過度の疲労
ブレインフォグ
不眠症
目覚めの悪さ
集中力の低下
ジャンクフードへの渇望
プレッシャーに弱くなる
体重増加
など。
副腎疲労を治す薬はなく、食生活、サプリメント、ライフスタイルの改善で治していくようになります。
食事療法
●副腎疲労の際、避けたほうがいい食品
カフェイン
甘味料
砂糖
加工食品
硬化油(マーガリンなど)
●副腎疲労の際、積極的に食べたほうがいい食品
種子類
カボチャ
ほうれん草
海藻
自然塩
アブラナ科の野菜
オリーブオイル
ココナッツ
アボカド
アーモンド
クルミ
脂肪の多い魚
有機ギー
など。
サプリメント
副腎疲労に効果があるサプリメントは、以下の通りです。
モリブデン
マグネシウム
ビタミンC
ビタミンB群
ミルクシスル
アシュワガンダ
など。
詳しくは↓こちらの記事をご覧ください。
ライフスタイルの改善
ライフスタイルの改善は、
ストレスを減らす努力をする。
具体的には、瞑想や森林浴、睡眠時間は最低7時間とりましょう。
適度な運動、サウナも効果的です。
重症度により、副腎疲労の回復には6〜24か月かかります。
まとめ
ステロイドは非常に強力であり、体に長期的な影響を与える可能性があるため、最後の手段としての使用以外は慎重になる必要があります。
症状の原因に作用するわけではなく、対症療法であり、長期の使用、高容量の使用で強い副作用が出るかもしれないリスクも知っておくべきです。
副腎が正常に機能していない状態では、緊急な手術などで体に大きなストレスがかかるケースで問題が起き、さらなる投薬が必要になるかもしれません。
ステロイドの処方の際、医師から副作用についてを十分に説明されないケースもあるようなので、残念ですが患者側が自分で調べ知っておく必要があります。
・アレルギー疾患がある人
・家族にアレルギー疾患がある人
・ステロイドの副作用について知りたい人