むし歯予防や歯周病予防のため、歯間をきれいに保つためにデンタルフロスを毎日使用している方は多いと思います。
そのデンタルフロスに有害な化学物質が含まれていたら…
そしてその化学物質が体に吸収されていたら…
2019年の「アフリカ系アメリカ人および非ヒスパニック系白人女性におけるPFASの血清濃度および曝露関連行動」という研究で、オーラルBというブランドのデンタルフロスを使用していた女性が、使用していなかった女性に比べ、血中にパーフルオロヘキサンスルホン酸(PFHxS)と呼ばれるPFASのレベルが高かったという報告がありました。
PFAS(per- and polyfluoroalkyl substances)とは、有機フッ素化合物であり、水や油をはじく、熱に強い、薬品に強い、光を吸収しない等の特性を持つため、撥水剤、表面処理剤、乳化剤、消火剤、コーティング剤等に幅広く用いられています。
この記事では、PFASを始めとするデンタルフロスに使用されている毒性化学物質について説明しています。
後半では、比較的安全なデンタルフロスを紹介しています。
デンタルフロスの有害成分
デンタルフロスに含まれる有害な成分は、以下の通りです。
- PFAS
- ナイロン・ポリエステル
- 人工香料
PFAS
PFASは先述した通り、有機フッ素化合物です。
「Forever Chemicals(永久に残る化学物質)」とも呼ばれ、自然界や体内で分解されにくく蓄積されやすい化学物質です。
CDC(アメリカ疾病予防センター)による、PFASを含む可能性がある製品のリストは以下の通りです。
- ファーストフードの容器・包み紙
- 電子レンジポップコーンの袋
- ピザの箱
- キャンディーの包み紙
- ノンスティック加工の調理器具(テフロンなど)
- 撥水加工されたカーペットや生地
- 防水加工された衣料品
- 掃除用洗剤
- シャンプー
- デンタルフロス
- マネキュア
- マスカラ
- 塗料・ニス・充填材
など。
PFASの健康への影響の可能性は、以下の通りです。
- コレステロール値の増加
- 肝臓機能低下
- 乳児の出生時体重のわずかな減少
- 妊婦の高血圧
- 腎臓がん、または精巣がんのリスクの増加
PFASは、デンタルフロスのワックスに含まれます。
フロスをする際に少量のワックスが歯に付着するため、飲み込んだり、口腔内の粘膜から吸収されます。
アメリカでPFASが検出されたデンタルフロスは、以下のブランドの製品です。
- オーラルB(Oral-B)
- CVS
- クレスト(Crest)
- セーフウェイ(Safeway)
- コルゲート(Colgate)
これらのブランドのフロスでも、ワックスでコーティングされていない製品にはPFASは含まれません。
先述した通り、PFASを含むフロスの使用で血中からPFASが検出されたということなので、たかがフロスでも思っている以上に健康に影響があるのかもしれません。
ナイロン・ポリエステル
ナイロンとポリエステルは合成繊維でデンタルフロスの繊維の部分に使用されており、石油化学製品です。
デンタルフロスの石油化学物質に関してはあまり研究が行われていないため、リスクがわからないということがあります。
非営利の環境保護団体、EWG(環境ワーキンググループ)は、石油ベースの物質を含むパーソナルケア製品の22%が、1,4-ジオキサンと最大20種類の他の毒素で汚染されていると推定しています。 1,4-ジオキサンは、定期的に吸入すると動物に対して発がん性があります。
研究によると、乳児に石油製品を使用すると、カンジダ症の発症率が高くなりました。
石油製品は内分泌かく乱物質として作用するため、体のホルモン生成に影響を及ぼす可能性もあります。
フロスによるナイロンやポリエステルの摂取はごく少量と思われますが、フロスが被せ物に引っかかりほつれたり切れたりした際などに小片を飲み込んでいる可能性があります。
またこれらはからマイクロプラスチックが発生するため、海洋汚染や海洋生物が摂取してしまうことで食物連鎖の上にいる人間にも影響します。
人工香料
デンタルフロスには無香料のものもありますが、その多くは香料やフレーバーが使われています。
香料も合成のものは石油由来のものが多く、フタル酸エステルで構成されています。
フタル酸エステルは環境ホルモンで、がん、脳疾患、アレルギー、奇形などを引き起こす可能性が指摘されています。
デンタルフロスのパッケージには、糸の素材が記載してあればいい方で、通常、ワックスの有無、香料の有無しか記載していないので、その成分が何であるかが分かりにくくなっています。
有害な化学物質を製品に含めない努力をしているブランドのフロスは、「PFASフリー」や「ナチュラルワックス」などと表記があります。
逆に表記がなければ有害物質が含まれていると思ってよさそうです。
安全なデンタルフロス
有毒物質を含まないフロスを選ぶ際、
- 糸はナイロンだけどワックスはミツロウ
- 糸はシルクだけどワックスにPFASを含む
などの組み合わせもあるため、記載されている原材料をよく読む必要があります。(パッケージに記載されていない場合は、製品のウェブサイトで確認。)
避けるべき有毒物質の有害度からの優先順位としては、
- PFAS・PTFE(テフロン)を避ける
- 石油由来のフタル酸エステルを避ける
- ナイロン・ポリエステルを避ける
になります。
通常の歯ブラシのブラシの素材もナイロンなので、ナイロンを避けるのはなかなか難しいです。
比較的安全なフロスを4種類購入し、使ってみました。
1、トムズオブメイン・アンチプラーク(Tom’s of Maine ANTIPLAQUE)スペアミント
糸の素材:ナイロン
ワックスの成分:ミツロウ・カルナウバ蠟 ・ホホバワックス ・アラビアガム ・ミルラ樹脂エキス ・プロポリス
香料:ナチュラルフレーバー
再生紙のようなベージュの色をしたフラットな形状な糸は、やや固めで丈夫です。
きつい歯間には入れるのが大変かもしれません。
歯間がきつくなければ、とても使いやすいです。
2、デザートエッセンス(Desert Essence)ティーツリーオイル
糸の素材:ナイロン
ワックスの成分:ミツロウ
香料の成分:ティーツリーオイル、ペパーミントオイル、スペアミントオイル
見た目も使用感も普通の一般的なフロスとほとんど差はありません。
糸は、そこまで幅が広くないフラットな形状で、太さは普通です。
ティーツリーオイルと言うよりミントの香りが勝っていますが、香りは全然きつくないです。
3、ドクター・タングス スマートフロス(drTung’s Smart Floss)カルダモン
糸の素材:ポリエステル
ワックスの成分:ミツロウ・植物ワックス(カンデリラ蠟・カルナウバ蠟・ヒマシ油・ライスワックスのうちどれか)
香料の成分:カルダモン
ドクター・タングスのフロスは、今回ご紹介している4種類のフロスの中で一番使いやすいです。
糸は、中が空洞で筒状のようになっていると思うのですが、少しだけ伸縮性があり丈夫でやや太めです。
カルダモン風味はチャイのような香りで、かなり気に入っています。
このフロスを使ってから、毎回のフロスの時間が楽しみになりました。
4、ラディウス ナチュラルシルクデンタルフロス(Radius)無香料
糸の素材:シルク
ワックスの成分:カンデリラ植物ワックス
健康、環境への安全を考えると、こちらのラディウスのフロスは、繊維がシルクで化学物質不使用なため一番オススメです。
このフロスは、なんとケースがなく紙で包まれているというエコっぷりです。
カッターもないため、要ハサミです。
使い終わったデンタルフロスのケースを捨てずにとっておいて、それに入れ替えるといいかもしれません。
それ以外では、使い心地は特に問題ないです。
少し繊維がバラバラになる感じがあり、きつい歯間、引っかかる場所などがあるとほつれるかもしれませんが、そこまで気にならないレベルです。
糸の太さはやや細めです。
まとめ
デンタルフロスに含まれている可能性がある毒性化学物質と、比較的安全なデンタルフロスを紹介しました。
紹介した4種類のフロスの糸の感じを比較したくて、まとめて写真を撮ってみました。
写真ではあまりよくわからないのですが、Tom’sとdrTungsの繊維はしっかりしていて、Desert EssenceとRadiusはふにゃふにゃしています。
私は健康と環境を考えてぜひRadiusを使いたいところですが、drTungsの使用感があまりにもいいため、どちらをリピートするか迷います。
皆さんもぜひ使い比べてみてください。