腸内に増殖したカンジダ菌を抑える食事療法・カンジダダイエットでは、カンジダ菌のエサになる食べ物を避けつつ、発酵食品やプロバイオティクスで腸内の善玉菌を増やしていきます。
この善玉菌は腸内で短鎖脂肪酸(Short chain fatty acids・SCFA)という成分を生成し、カンジダ菌などの真菌に対し抗真菌作用を発揮するため、非常に重要になります。
この記事では、短鎖脂肪酸とは何か、短鎖脂肪酸の効能、短鎖脂肪酸を効率的に摂取するにはどうしたらいいか、低FODMAP食をしている人はどうしたらいいか、について説明しています。
短鎖脂肪酸とは?
脂肪酸とは油脂を構成する成分のひとつで、いくつかの炭素が鎖のように繋がった構造をしています。
脂肪酸の分類は2種類あります。
炭素数での分類
●短鎖脂肪酸(炭素数 5個以下)
●中鎖脂肪酸(炭素数 6〜12個)
●長鎖脂肪酸(炭素数 13個以上)
ケトン体の生成を促進するため、ケトジェニックダイエットで摂取されるオイルです。
短鎖脂肪酸と中鎖脂肪酸は、体内では異なる形で処理されます。
不飽和結合の有無による分類
●飽和脂肪酸
●不飽和脂肪酸 一価不飽和脂肪酸 / 多価不飽和脂肪酸
短鎖脂肪酸はいくつか種類があります。
●酢酸
●プロピオン酸
●酪酸
●イソ酪酸
●吉草酸
●イソ吉草酸
●カプロン酸
●乳酸
●コハク酸
このうち、人の腸内で善玉菌が産生してくれる短鎖脂肪酸のうちの95%は、酢酸・プロピオン酸・酪酸の3種類です。
これら3つとも体内で異なる働きをします。
短鎖脂肪酸は、体内でどのような働きをするのでしょうか?
短鎖脂肪酸の効能
1、腸内環境を整える
短鎖脂肪酸、特に酪酸は、腸内の細胞分裂を司る遺伝子を活性化させ、細胞(腸上皮細胞)のエネルギー源になります。
さらに、短鎖脂肪酸によって腸内の粘膜が酸性に保たれるため、酸性環境が嫌いなカンジダ菌などの悪玉菌増殖の抑制につながります。
短鎖脂肪酸が腸内の粘膜のバリアを強化し、ミネラルなど栄養素の吸収を促進します。
2、消化器官の問題を予防・改善する
短鎖脂肪酸、特に酢酸と酪酸は、潰瘍性大腸炎とクローン病といったIBD(炎症性腸疾患)の改善に期待されています。
これらの消化器系の問題に効果を示すと言い切るにはもう少し研究が必要なようですが、短鎖脂肪酸の欠乏がIBDやクローン病を悪化させることはわかっています。
また短鎖脂肪酸の欠乏は、下痢や便秘を引き起こすこともわかっています。
3、抗炎症作用
短鎖脂肪酸は、消化器官内で電解質や吸水など、さまざまなプロセスを調節。
サイトカインなどの産生を含む白血球機能を調節する短鎖脂肪酸は、白血球が炎症の病巣で病原性微生物を攻撃することを促進します。
それだけでなく、リンパ球、マクロファージ、好中球のアポトーシスも誘発します。
一部の細胞があらかじめ遺伝子で決められたメカニズムによって、なかば自殺的に脱落死する現象。
個体をより良い状態に保つために積極的に引き起こされる。
4、肥満を予防する
短鎖脂肪酸は脂肪燃焼を促進、脂肪蓄積を減少させて脂肪代謝も調節することが示されています。
これにより血液中の遊離脂肪酸の量が減り、体重増加を防ぐ効果につながります。
ただこれはマウスを使った動物実験での結果がメインなため、人での実験結果がもう少し必要なようです。
5、免疫機能を高める
短鎖脂肪酸は、リンパ球のひとつで免疫に大きく関係しているT細胞を誘発します。
短鎖脂肪酸の腸管内濃度は、腸内のT細胞の数と比例します。
免疫細胞であるT細胞が腸内に数多く存在する状態は、病原菌の抑制になります。
6、血糖値を調節する
短鎖脂肪酸は、肝臓および筋肉組織の酵素活性を高め、血糖値をコントロールすることが示されています。
ただ、これもマウスの動物実験の結果がメインで、人での実験結果ではないのですが、酢酸とプロピオン酸のサプリメントは、糖尿病マウスと正常ラットの血糖値を改善しました。
人を被験者にした実験では、プロピオン酸サプリメントが血糖値を改善させることがわかりましたが、別の実験では、健康な人の血糖にはそこまで改善する効果を示さなかったということです。
7、抗がん作用
短鎖脂肪酸は、特定のがん、主に結腸がんの予防と治療に重要な役割を果たす可能性があります。
酪酸は結腸で腫瘍細胞の成長を抑制する働きがあることはわかっていますが、そのメカニズムはまだ解明されていないようです。
腸内に短鎖脂肪酸産生菌を多く持ち、食物繊維をたくさん摂取したマウスは、細菌を持たないマウスに比べ、腫瘍の発生が75%低い結果になりました。
産生菌を多く持つけど食物繊維の摂取が少ないマウス、
産生菌は持たないけど食物繊維を多く摂取したマウスでは、この効果は得られませんでした。
8、心機能を促進する
食物繊維の摂取量が高いことが心臓病を予防することを示す研究結果は多く、これは短鎖脂肪酸の効能と考えられています。
短鎖脂肪酸はコレステロールを産生する重要な遺伝子と相互作用を示し、コレステロールの産生を低下させると考えられています。
短鎖脂肪酸の摂取方法
素晴らしい効能をたくさん持ちぜひ積極的に摂取したい短鎖脂肪酸ですが、短鎖脂肪酸を含む食べ物は少なく、摂取のメインは腸内細菌に生成してもらう方法になります。
人間の腸では酵素がなく消化できなかった食物繊維を、嫌気性菌が発酵させることで短鎖脂肪酸が生成されます。
そのため、短鎖脂肪酸を摂取するには嫌気性菌のエサになる食物繊維をたくさん摂取することが重要になります。
食物繊維に加えて、特定の糖やでんぷんも腸内細菌のエサになります。
短鎖脂肪酸レベルを上げる食べ物
腸内細菌が発酵し短鎖脂肪酸を生成してくれるのは、以下の食物繊維・糖・でんぷんです。
●ペクチン
●イヌリン
●フラクトオリゴ糖
●レジスタントスターチ
●アラビノキシラン
ペクチン
ペクチンは、特に果物やベリー類に豊富に含まれる粘性の多糖類。
添加物として使用されることもあります。
柑橘系果物、りんご、桃、アプリコット、アボカド、人参、トマト、ジャガイモ、えんどう豆、穀物に含まれています。
イヌリン
イヌリンは水溶性食物繊維で、約3万6千種の植物に含まれているプレバイオティクスです。
腸内で善玉菌のエサになるため、プロバイオティクスのサプリメントに添加されていることもあります。
チコリ、タンポポの根、アスパラガス、玉ねぎ、ネギ、菊芋、バナナ、ニンニク、アーティチョーク、生のハーブ、ごぼうなどに含まれます。
フラクトオリゴ糖
フラクトオリゴ糖は、人工的に作られた甘味料と自然に食材に含まれるオリゴ糖があります。
ヤーコンという根菜に多く含まれますが、食材に含まれるオリゴ糖は含有量が少ない傾向にあります。
他には、バナナ、玉ねぎ、ライ麦、エシャロット、菊芋、ニンニク、アスパラガス、ネギ、ゴボウ、アーティチョーク、大豆、チコリ、サトウキビ、リンゴ、トウモロコシ、ヨーグルト、牛乳、味噌、醤油、ハチミツ、きな粉などに含まれます。
レジスタントスターチ
レジスタントスターチは、難消化性でんぷんのことを言います。
通常のでんぷんは、摂取すると小腸で消化酵素によって分解されてグルコースになり、血液へ取り込まれるため血糖値が上がります。
これに対し、レジスタントスターチは消化酵素によって分解されにくいため、血糖値の上昇が低く抑えられます。
米、ジャガイモ、豆類などを加熱して冷ました時に、レジスタントスターチの含有量が上がります。
アラビノキシラン
アラビノキシランは、あまり出回っていないタイプのでんぷんですが、玄米の米ぬかの部分に少量含まれます。
他には、麦、とうもろこしに含まれます。
短鎖脂肪酸を含む食べ物
短鎖脂肪酸を含む食べ物は種類が少なく、乳製品くらいです。
特にバターとギーには、酪酸が約3〜4%含まれます。
ただ、バターとギーを大量に食べることは無理があるため、食物繊維やレジスタントスターチを摂取する方が効率的です。
他には、ヨーグルトやケフィアに含まれます。
Acetate(酢酸)とacetic acid(酢酸)の違い
Acetateとacetic acidは、日本語にすると両方「酢酸」になりますが、同じものではありません。
アップルサイダービネガーに含まれる酢酸(acetic acid)は、短鎖脂肪酸の酢酸(acetate)ではありませんが、短鎖脂肪酸生成を促進します。
短鎖脂肪酸のサプリメント
短鎖脂肪酸のサプリメントは存在します。
最も一般的なタイプは、酪酸ナトリウムなどの酪酸塩です。
これはイヌリンやペクチンなどのように体に短鎖脂肪酸を生成させるのではなく、直接短鎖脂肪酸を摂取する形態です。
短鎖脂肪酸サプリメントの問題点は、大腸に到達する前に小腸で吸収されてしまう傾向があることです。
食事から摂取した食物繊維やレジスタントスターチは、ちゃんと大腸まで届き大腸で菌に発酵され短鎖脂肪酸になるため、サプリメントよりも食事からの摂取が推奨されます。
↑酪酸サプリメントのリンクです。
参考までに貼っておきました。
IBS・SIBOの場合の短鎖脂肪酸摂取
IBS(過敏性腸症候群)・SIBO(腸内細菌異常増殖症候群)の症状があり、低FODMAP食をされている方は、この記事でオススメしている食べ物を見て「食べられない食品ばかり」と思われたかもしれません。
低FODMAP食は、IBS・SIBOの症状を軽減させるためFODMAPの食品を避ける食生活のことを言います。
IBS・SIBOの場合、低FODMAP食をしながらも、症状が悪化しない程度でペクチン、イヌリン、フラクトオリゴ糖、レジスタントスターチ、アラビノキシランを摂取していくようになります。
低FODMAP食は辛い症状を緩和させる手段で、長期的に続けるべきではありません。
長期の低FODMAP食は、食物繊維が不足し、短鎖脂肪酸の欠乏につながります。
これはカンジダダイエットにも言えることで、少しずつゆっくりと様子を見ながら食物繊維やでんぷんを摂取していくことが大切です。
まとめ
短鎖脂肪酸とは何か、短鎖脂肪酸の効能、短鎖脂肪酸は食品に含まれていることが少ないため腸内細菌に作ってもらう、そのためにはペクチン、イヌリン、フラクトオリゴ糖、レジスタントスターチ、アラビノキシランを含む食品を積極的に食べることが大切ということでした。
低FODMAP食をされている方は、少しずつ導入していってください。
ちなみに、自分の短鎖脂肪酸量を知る方法は、便検査のみということでが、便に腐敗したような匂いがある場合、短鎖脂肪酸量が不足しているサインということです。
短鎖脂肪酸が不足すると、消化器官内のバリア機能が弱まり、感染しやすくなります。
短鎖脂肪酸を生成してくれる、乳酸菌、ビフィズス菌、酪酸菌などと共に、これらの菌のエサになる食品をたくさん摂取することは大切なことです。
・消化の問題を抱えている人
・腸内環境の問題を抱えている人
・健康維持したい人