モリブデンというミネラルは、肝臓や腎臓などに多く存在するミネラルで、補酵素として働きます。
1日の摂取量は100㎎未満と少ないため、微量ミネラルに分類されます。
そして必要量は少量ですが健康維持には欠かせないため、必須ミネラルと呼ばれます。
モリブデンがない状態では、体に毒素が蓄積していくことになります。
土壌に存在するため、モリブデンを含むミネラルが豊富な土壌で育った植物、その植物を食べて育った動物の肉に含まれています。
モリブデンを含む食品は多いため欠乏するケースはまれですが、カンジダ症などの腸内環境の問題を抱える人にとっては、確実に摂取したい大切な栄養素になります。
この記事では、モリブデンが必要な人、モリブデンの効能、モリブデンを多く含む食品、サプリメント、摂取量について説明しています。
モリブデンとは?
モリブデンは、北南米で世界の過半数を産出している銀白色の硬い金属です。
硫化モリブデンは、工業用の潤滑油やエンジンオイルの添加剤として使われます。
栄養素としてのモリブデンは、鉄やマグネシウムと同様に、体内の必須ミネラルです。
モリブデンは、体内で酵素の働きを助けます。
体はモリブデンを微量しか必要とせず、多くの食品に豊富に含まれているため、モリブデン欠乏症はまれです。
このため、特定の理由がない限り、通常サプリメントは必要としません。
モリブデンは、胃と腸から血液に吸収され、肝臓、腎臓、その他の部位に運ばれます。
モリブデンが必要な人
米国での1日の平均モリブデン摂取量は、
男性 109μg
女性 76μg
です。
推奨摂取量が45μgなので、平均摂取量が推奨摂取量を超えていることがわかります。
日本での1日の平均モリブデン摂取量は、18〜29歳の大人の場合、
男性20μg (推定平均摂取量 25μg)
女性20μg (推定平均摂取量 20μg)
日本人もモリブデンが十分足りているようです。
それでは、積極的にモリブデンを摂取した方がいい人は、どんな人でしょうか?
1、カンジダ症の人
●カンジダ症
●リーキーガット症候群
●過敏性腸症候群(IBS)
●腸内細菌異常増殖症候群(SIBO)
●セリアック病
など、腸内環境の問題を抱える人は、モリブデンを消耗している可能性があります。
腸内で増殖したカンジダ菌は、餌である糖分を食べ代謝します。
その代謝の副産物として毒素を生成しますが、その毒素の中で厄介なものがアセトアルデヒドです。
二日酔いの原因にもなる神経毒のアセトアルデヒドは、脳細胞を破壊するため脳の機能を妨げます。
カンジダ症の症状の一つ、ブレインフォグはこのために起こります。
そしてアセトアルデヒドが体内で解毒・排出されないと、赤血球の細胞膜も損傷を受け、体の各組織に酸素が運ばれなくなり慢性の疲労につながります。
モリブデンは、体内で毒性のあるアセトアルデヒドを無害な酢酸に変換するプロセスの補酵素の働きをします。
カンジダ症の食事療法「カンジダダイエット」をする際、腸内でバイオフィルムを作っていたカンジダ菌が死滅、バイオフィルムが除去されていく過程で、バイオフィルムに溜め込まれていたアセトアルデヒドが一気に放出されることがあります。
この放出されたアセトアルデヒドが原因で、ダイオフ(Die-off)という症状が引き起こされます。
カンジダダイエット開始と同時にモリブデンのサプリメントを摂取することは、ダイオフの症状を和らげることにつながります。
2、アルコール中毒の人
アルコールを摂取した際、体内ではエタノールを代謝することが必要になり、同じくアセトアルデヒドが生成されます。
通常、モリブデンは肝臓に貯蓄されていますが、極度のアルコール摂取で枯渇します。
モリブデンが欠乏している状態ではアセトアルデヒドは体内に留まり、体調不良を引き起こします。
3、ジャンクフードばかり食べる人
モリブデンは、亜硝酸塩の解毒にも関与しています。
亜硝酸塩とは、主に酸化防止剤・漂白剤として使われる食品添加物です。
亜硝酸塩が使われることがある食品
●ワイン
●ビール
●ドライフルーツ
●加工肉
●清涼飲料水
●ザワークラウト
●メープルシロップ
●豆腐
●ゼラチン
●コンビニ弁当
●レトルト食品
など。
亜硝酸塩もモリブデン欠乏の状態では体内に蓄積し、アレルギー疾患、消化器系の問題などの原因になります。
4、長期間の完全静脈栄養を投与されている人
入院中にチューブで人工栄養を投与されていた患者がモリブデン欠乏症になったケースがあるようです。
心拍数と呼吸が乱れ、嘔吐、見当識障害、最終的には昏睡状態に陥ってしまったということです。
5、モリブデンが少ない地域に住む人
食品のモリブデン含有量は、その食品が育った地域の土壌のモリブデン含有量に左右されます。
モリブデンが少ない地域に住む人たちは、髪と爪のサンプルでモリブデンレベルが低いことが確認されており、食道がんのリスクが高い傾向にあります。
モリブデンレベルが低い地域
●南アフリカ
●中国北部
●イラン北部
の土壌は、モリブデンレベルが非常に低く、食道がんの症例も多く報告されています。
逆にモリブデンレベルが高い地域は、
●南北アメリカ
●ロシア
●中国
と言った、オーストラリア、南極大陸、アフリカを除く大陸に豊富に存在します。
日本のモリブデンレベルについての文献は見つけられませんでしたが、大陸ではなく島国な為、高いということはないと見ています。
モリブデンの効能
1、亜硝酸塩過敏症の軽減と予防
先ほども出てきた、食品を新鮮に見せる為の添加物が亜硝酸塩です。
様々な現代食に添加されている為、摂取したことで体調不良になる過敏症が増えています。
モリブデンの欠乏は、亜硝酸塩過敏症のリスクを高めます。
2、プリン体を尿酸に分解
尿酸の機能は、強力な抗酸化物質として作用し、活性酸素(フリーラジカル)を除去および中和するのに役立つため、身体にとって非常に重要です。
キサンチンオキシダーゼという酵素は、モリブデンの補助を受け、痛風の原因になるプリン体を尿酸に分解します。
尿酸レベルが高いと、痛風の原因になります。
尿酸レベルが低下した場合、多発性硬化症(MS)、アルツハイマー病、ハンチントン病(HD)、パーキンソン病(PD)などの深刻な障害に発展する可能性があります。
3、循環をサポート
モリブデンは、体内の正常な一酸化窒素レベルを維持します。
一酸化窒素は、血管を拡張するのに役立つため、健康な循環に必要です。
また、細胞の成長と血管の損傷を修復するのにも役立ちます。
4、食道がんの予防
モリブデンが少ない地域に住む人たちに食道がんが多いことから、モリブデンが食道がんおよび、胃がんを予防すると考えられています。
モリブデンは、植物性食品中の発がん性物質ニトロソアミンの生成を防ぐためと見られています。
5、肝臓のサポート
カンジダ菌が代謝の際に生成するアセトアルデヒドという神経毒を肝臓が解毒する際、モリブデンが補酵素としてサポートします。
6、虫歯のリスクを下げる
歯のエナメル質はモリブデンの含有量が高いため、モリブデンが虫歯のリスクを下げる可能性が期待されています。
7、赤血球の産生をサポート
モリブデンは、リボフラビン(ビタミンB2)と連携してヘモグロビンに鉄を取り込み、赤血球の産生をサポートし、貧血を防ぎます。
モリブデンを多く含む食品
●豆類
●ナッツ類
●乳製品(特にチーズとヨーグルト)
●葉物野菜
●卵
●穀類
●レバー
●トマト
など。
大豆はモリブデン含有量が高い食品ですが、大豆に含まれるフィチン酸がモリブデンを含むミネラルの吸収を阻害するため、吸収率は低くなります。
納豆や味噌など発酵された大豆は、フィチン酸が分解されているため、よりモリブデンを吸収できます。
モリブデンに限らず、ミネラルは食事と共に摂取した時、ホールフードで摂取した時が一番吸収されます。
モリブデンのサプリメント
ほとんどの場合食事から摂取できるモリブデンですが、カンジダダイエットなどのデトックス、クレンズをする際は、サプリメントでの補助がダイオフを軽減します。
モリブデンのサプリメントは、グリシン酸でキレートされたグリシネートモリブデンが一番吸収率が高いそうです。
↓楽天・アマゾン・ヤフーショッピングでは、グリシン酸でキレートされたモリブデンが見つかりませんでした…
↓iHerbでは、ありました。
モリブデンの摂取量
推奨摂取量
厚生労働省が発表している「日本人の食事摂取基準(2015年版)」によると、モリブデンの1日の推奨量・摂取量は次のように定められています。
男性
18〜29歳 25μg
30〜49歳 30μg
50〜69歳 25μg
70歳以上 25μg
耐容上限量 550μg
女性
18〜29歳 20μg
30〜49歳 25μg
50〜69歳 25μg
70歳以上 20μg
耐容上限量 450μg
厚生労働省の推奨摂取量では、授乳中の女性は+3μgとなっています。
アメリカでの推奨摂取量では、妊娠中・授乳中の女性は+5μgとなっています。
過剰摂取
ほとんどのビタミンやミネラルは、推奨摂取量以上に摂取しても利点はありません。
ほとんどの人が推奨摂取量以上のモリブデンを摂取していると考えられ、通常過剰な分は尿で排泄されるようです。
許容上限摂取量は、1日に摂取した場合を想定しており、上限に達していない量でも、長期にわたり摂取を続けた場合は、副作用が出る可能性があります。
↑こちらの記事には、男性が18日間で1日あたり300〜800μgを摂取し際、発作、幻覚を発症し、永久的な脳への損傷につながってしまった、とあります。
モリブデンと銅
モリブデンの過剰摂取は、銅の吸収を阻害し、貧血につながる可能性があります。
また、銅欠乏の状態でのモリブデン摂取は、関節痛、筋肉痛、疲労、下痢などのリスクが上がります。
銅摂取のバランスは、どのように気をつけていいかわからない部分があると思います。
そのため、ホールフードで食品をいただくことが、一番バランスが取れる方法になります。
人工的に配合された、添加された栄養素は、食品に自然に配合された栄養素に比べ、どうしてもバランス面で劣ります。
肉・魚・野菜などは、できるだけ捨てる部分がないよう工夫して食べることが大切です。
まとめ
必要量は微量ですが、欠乏していると体内の毒素が排出されず、体調不良につながるモリブデン。
健康な人は食事で十分に補えていますが、カンジダ症の人、お酒をよく飲む人などは、欠乏しやすいと言えます。
その場合、サプリメントで補う必要が出てくるケースもあるようです。
ブレインフォグや重度の疲労がある場合、モリブデンが不足していることを疑ってみてください。
また、カンジダダイエットなどのデトックスやクレンズを行う際は、一度に溜まっていた毒素が排出されるため、モリブデンの補助は必須と言えるようです。
これらのケースに当てはまらない場合、健康的な食生活を心がけていれば、サプリメントでの補助は必要ありません。
モリブデンについて説明してきましたが、ダイオフにはマグネシウムも重要になります。
↓マグネシウムについては、こちらの記事を参考にしてください。
↓モリブデン豊富なアメリカ・ユタ州から採掘される天然塩「リアルソルト」は、60種類以上のミネラルを絶妙なバランスで配合されています。
毎日使う塩でミネラルを補うことは、簡単にできて効率的です。
・カンジダ症の人
・お酒が好きな人
・ジャンクフードをよく食べる人
・添加物過敏症の人
・副腎疲労の人
・ブレインフォグの症状がある人