痩せるため、健康のために糖質制限をすることは一般的になりましたが、極度な糖質制限や糖分を全く摂らない断糖で体調を崩してしまったという話はよく聞きます。
当サイトで紹介しているカンジダ菌除菌の食事療法「カンジダダイエット」も、カンジダ菌のエサになる糖分・炭水化物を避けるため、極度な糖質制限と言えます。
カンジダダイエットも間違ったやり方で続けてしまうと、余計症状が悪化してしまうことがあります。
この記事では、カンジダダイエットをはじめとした、ケトジェニックダイエット・パレオダイエット・アトキンスダイエットなどの糖質制限・断糖を長期間続けることの危険性、ではカンジダダイエットなどの糖質制限をする際どこを気をつければいいのか、カンジダダイエットは注意点を抑えていれば効果的、ということについて説明しています。
糖質制限・断糖は危険?
●カンジダダイエット
●ケトジェニックダイエット
●パレオダイエット
●アトキンスダイエット
●炭水化物ダイエット
●ローカーボダイエット(ロカボダイエット)
など糖質制限の食事療法は、糖・炭水化物を徹底的に避ける、高脂肪・高たんぱく質という共通点があります。
それを踏まえて、糖質制限の危険性を説明します。
体内で糖が不足するとケトン体が生成される
極度な糖質制限により、体内で糖(グルコース・ブドウ糖)が不足すると血糖値が下がります。
血糖値が下がると、まず肝臓がグリコーゲンという形で保存していた貯蔵庫からブドウ糖を使います。
それも使い切ると、肝臓がブドウ糖を生成する糖新生という働きが起こり、血糖値が調整されます。そのため低血糖に陥ることを回避することができます。
食後の血糖値の変化を表したグラフです。
赤線が高炭水化物・低脂肪
緑線が低炭水化物・高脂肪糖分の高い食事だと、食後240分(4時間)で低血糖に陥ることがわかります。
低糖の食事は、血糖値の乱高下なし。
糖質制限が低血糖を引き起こすわけではありません。 pic.twitter.com/nZxs6nmAZS
— ユー子@カンジダ情報発信中 (@yuko_candida) March 27, 2020
図のように、糖新生は肝臓で行われ、筋肉では解糖というブドウ糖をピルビン酸という有機酸や乳酸塩に分解し、エネルギーを作るということが行われています。
糖質、脂質、タンパク質の代謝も
ルートが決まっていて
学生時代時代(栄養学科)
「うわあ!地下鉄の路線みたい!」って
びっくりしました。 pic.twitter.com/348JPjDbQB— 福笑 (@smile106uvu) March 26, 2020
細かいところまで突き詰めると非常にややこしいエネルギーの代謝ですが、簡単に言うと、体の色々な組織がそれぞれ違う役割を持ち、上手くバランスを取っています。
リスクヘッジも完璧で、いざという時のためにブドウ糖を貯蔵したり、別ルートが用意されていたり。枯渇してもそれをカバーできる機能があります。
多少食べられない状態になっても、死なないようにできています。
そして体内に糖が入ってこないと糖新生が起き、その際脂肪が分解され生成される化合物をケトン体と言います。
ケトン体はエネルギー源として使われ、ケトン体が生成されている状態のことをケトーシスと言います。
ケトーシスは、糖・炭水化物・たんぱく質の摂取が少ない時、断食・絶食・少食・空腹時、MCTオイルやココナッツオイルなど中鎖脂肪酸摂取時に起こります。
体は組織によって、ブドウ糖・ケトン体の両方をエネルギー源として使える場合もあれば、赤血球はブドウ糖のみ、肝臓はケトン体が使えない(ケトン体を作るため)など、違いがあります。
ケトン体をエネルギーとして使うことで、体に糖が入ってこない状態でもブドウ糖を消耗せず、ブドウ糖を必要な組織に回すことができます。
ケトジェニックダイエットは、もともと発作やがん治療の食事療法として行われてきましたが、脂肪を分解してケトン体を作るプロセスで痩せるため、近年はダイエットとして認知されています。
糖尿病の場合
糖尿病の場合、ケトン体が増加すると血液が酸性に傾き脱水症状などのリスクが高まります。
だから「ケトン体は悪い」というわけではなく、通常血糖値が上がった際に血糖値を下げる役割のインスリンが糖尿病の場合は十分分泌されない、または効きが悪いために起きます。
インスリンの役割は血糖値を下げ、体内の細胞にブドウ糖を分配することです。
糖尿病でインスリンが分泌されないと、体内の細胞がブドウ糖を受け取れないため、エネルギーを脂肪から作ったケトン体で補うようになります。
この糖尿病が原因でケトン体が作られる状態はケトアシドーシスと言い、糖質制限やケトジェニックダイエットをした際にケトーシスになることとは別問題です。
ケトーシスの利点
糖尿病が原因でケトン体が増えるケトアシドーシスは体にとって危険な状態ですが、糖質制限やケトジェニックダイエットによるケトーシスは、体にとって利点があります。
●痩せる
脂肪を分解してケトン体を作るため、痩せます。
●炎症を抑える
糖質をエネルギー源にすることに比べ、ケトン体をエネルギー源にすることで活性酸素(フリーラジカル)の生成が抑制されます。
●脳内の神経伝達物質のバランスを正常に保つ
脳神経のバランスを保つ作用があるため、てんかんなどの発作・パーキンソン病・アルツハイマー病に効果があると言われています。
●糖尿病・心疾患の予防
糖質過多な食事で常にインスリンが分泌されている状態を、ケトーシスになることでリセットされます。
また、高血糖で血流が悪くなっている状態も改善されます。
●がん治療
がん細胞がブドウ糖を利用して成長することを阻害します。
●外傷性脳損傷の改善
脳の炎症を軽減することがわかっています。
ケトーシスには以上のような利点がありますが、欠点もあります。
ケトーシスの欠点
●リバウンド
糖質制限によってケトン体をエネルギー源にする期間が長くなると、インスリンが分泌される機会が減り、結果的にインスリン感受性が低下します。
そのため、元の食事に戻した時に糖代謝がうまくできず、脂肪がつきやすい、リバウンドしやすい状態になります。
元の食事に戻すときは、慎重にゆっくりやる必要があります。
●ビタミンC・食物繊維不足
糖質制限では糖分の高いフルーツを避ける傾向があります。
フルーツはビタミンC豊富なため、フルーツを避けることでビタミンCの摂取源が減ります。
とはいえ、現代の品種改良が進められたフルーツは、糖分が高くなりビタミンC以外の栄養素は減少している傾向があります。
ビタミンCは野菜にも豊富に含まれています。
また、糖質制限をすると空腹のため肉や魚ばかり食べてしまい、野菜が不足し食物繊維が欠乏する傾向もあります。
糖質制限でビタミン不足になる理由
ビタミンB群 ー 穀物や豆類を避ける為
ビタミンC ー 果物を避ける為
ビタミンD ー 糖質制限でマグネシウムが排出され、Dが効率的に使えない・糖質制限をしていなくても不足になりがちhttps://t.co/7luxlQnKpj
— ユー子@カンジダ情報発信中 (@yuko_candida) March 31, 2020
●ケトフルー
糖質制限により疲労やブレインフォグ、倦怠感の症状が出ることはよくあり、「ケトフルー」と呼ばれます。
この症状はケトジェニックダイエットでは、
– 糖質制限による脱水症状
– 糖質制限によるミネラル(電解質)の排出 → 欠乏
– メインのエネルギー源をブドウ糖からケトン体に移行することに体が適応する症状
と考えます。
糖質制限でミネラル不足になる理由
貯蔵していたグリコーゲンからブドウ糖を生成する「糖新生」は水分がたくさん必要
↓
ケトン体生成にも水分が必要
↓
水分と一緒に電解質であるミネラル(特にナトリウム、カリウム、マグネシウム)が排出https://t.co/PkxkWoV3qj— ユー子@カンジダ情報発信中 (@yuko_candida) March 31, 2020
ちなみにカンジダダイエットではこの症状を、糖質制限により死んでいくカンジダ菌が放出した毒素を肝臓や腎臓が処理しきれなくなっている「ダイオフ」と考えます。
ケトフルーであっても、ダイオフであっても、水分補給・ミネラル補給の重要性は共通します。
ちゃんと対策をとれば、危険な状態は回避できます。
危険なのは、長期間継続する糖質制限です。
長期間の糖質制限が危険
極度の糖質制限によりケトーシスが長期間続くことは危険な場合があります。
以下のケースは、長期間の糖質制限のリスクで、短期間の場合はそれほど心配いりません。
ケトアシドーシス
もともとは糖尿病でなくても、長期の糖質制限によってケトアシドーシスになる危険性があります。
これは糖質制限をすると、どうしても肉などの脂質の摂取が増え、血液が酸性に傾くためです。
とはいえ、ケトアシドーシスは通常、糖尿病患者がインスリン注射を忘れた時に起こる症状で、少しの糖質制限で簡単に陥る症状ではありません。
甲状腺機能低下症
長期の糖質制限は、甲状腺の機能を低下させる危険があります。
ケトン体をエネルギー源にすることで血糖値スパイクが起きなくなり、インスリン分泌が減らせるのは確かですが、インスリンが減りすぎてしまうことも問題になります。
インスリンが減りすぎてしまうと、甲状腺ホルモンであるT3(トリヨードサイロニン)とT4(サイロキシン)が減るということがわかっています。
甲状腺ホルモンの不足で起こる症状の代表例は、橋本病です。
橋本病は、甲状腺に慢性の炎症が起きている病気で、自己免疫疾患の一つです。
体温が教えてくれること4つ
1、代謝速度
代謝率が低下すると体温も低下します。
体温の低下は甲状腺ホルモン機能の低下につながります。糖質制限により基礎体温が下がっていることに気づいたら、炭水化物の追加をオススメします。
— ユー子@カンジダ情報発信中 (@yuko_candida) July 7, 2020
粘液の低下
長期間の糖質制限は、粘膜に必要な粘液も減少させるようです。
体の粘液はムチンと呼ばれる、糖とタンパク質が結合した多糖類で構成されています。
糖質制限によりブドウ糖が減り、糖新生でタンパク質が消費されている状態では、ムチンの生産量が減少します。
ムチンの欠乏により、ドライマウス・ドライアイ、さらには便秘も引き起こされることがあります。
粘膜と粘液で守られている胃や腸の壁は、ムチンの欠乏によりピロリ菌など病原性の菌からの感染を防止することが難しくなり、胃腸がんなど消化器官系のがんのリスクが高まります。
また、喉の粘膜に影響が出る場合、肺炎のリスクも高まります。
白血球の減少
●好中球
●リンパ球 ー Tリンパ球・Bリンパ球
●好酸球
●好塩基球
●単球(マクロファージ)
以上の5種類が白血球です。
好中球は病原性の菌を食べ、リンパ球は菌やウイルスを攻撃するなど、それぞれの役割が免疫に関わっています。
白血球は通常、骨髄に貯蔵されており、病原菌が侵入してきた時に血液に放出されます。
そのため、白血球数が多い状態は体に炎症や感染がある状態のことが多く、少ない状態は再生不良性貧血、肝不全、白血病、HIV、インフルエンザ、はしか、抗がん剤治療の影響などが考えられます。
そしてビタミン・ミネラルの欠乏が白血球数を減少させることもあります。
長期間の糖質制限でケトーシスが続く場合、ビタミン・ミネラルの欠乏に陥りやすくなり白血球数が減少することがあります。
カンジダダイエットも長期間すべきではない
カンジダ除菌の食事療法であるカンジダダイエットも、長期間ではすべきでないと言えます。
理由は、以下の通りです。
免疫機能にはある程度のブドウ糖が必要
カンジダ菌はブドウ糖を始め糖全般をエサに増殖しますが、それを考慮しても、糖質制限で白血球数が減少し免疫機能に影響が出ることの方が害が大きいと考えます。
カンジダ菌と同様、Tリンパ球もブドウ糖が大好きです。
過剰摂取にならない程度に炭水化物を摂取することは、免疫を強化することになります。
カンジダダイエットでは、最初に断糖をし(最長でも2週間)、その後は少しずつ炭水化物やでんぷんを摂取する食事に戻していきます。
最初に短期間の断糖することである程度のカンジダ菌が死にます。
その後食事を元に戻していくことで残っているカンジダ菌にブドウ糖をあげることになりますが、腸内の善玉菌を増やしていくことで残っているカンジダ菌が住みづらい環境を作っていきます。
胃や腸の壁に粘液が必要
粘膜の粘液の成分であるムチンは、糖とタンパク質が結合した多糖類であるということは先ほど説明しました。
カンジダ症の場合、カンジダの真菌がバイオフィルムを作り腸壁に損傷を与えているため、粘膜の保護は非常に大切になります。
長期間のカンジダダイエットでの糖質制限は、ムチンの生産に影響を与えるため、避けた方がいいと言えます。
断糖や極端な糖質制限は腸内環境に害
カンジダダイエットでは、腸内のカンジダ菌にエサになる食べ物を与えず、プロバイオティクスを摂取して善玉菌を増やしていきます。
その際、長期間完全に断糖をしてしまうと、善玉菌のエサも排除してしまうことになり、善玉菌が育ちません。
善玉菌はエサとなるプレバイオティクスを摂取して、腸内環境に重要な短鎖脂肪酸を生成するため、短期間の糖質制限の後は少しずつプレバイオティクスを摂取して善玉菌の成長を促進します。
その際、血糖値を上げにくいレジスタントスターチというでんぷんの摂取は、カンジダダイエット中の腸内環境に有益です。
短期間、または断続的な糖質制限は効果的
長期的な糖質制限のリスクを説明してきましたが、短期的に行う分には効果的ということがわかっています。
マウスを使った動物実験では、1週間のケトーシス下にあったマウスの血糖値と炎症レベルが改善したことが示されました。
糖質・炭水化物が体内にほとんど入ってこないということは、体にとっては飢餓に相当し、脂肪を分解して命を守ります。
この体による非常時の対策は長期間で行うことを想定していないため、短期間では効果が出ても長期間では歪みが生じてくるようです。
完全な断糖である本気の糖質制限を行う際は、期間は約1週間、最長でも2週間を目安に行いましょう。(糖尿病など症状によって異なります。)
ゆるい糖質制限の場合は、ケトフルー、またはダイオフの症状があったら、糖質制限をさらにゆるめましょう。
そして糖質制限に入る前、やめる際も、突然食事内容を変化させるのではなく、慎重にゆっくりと変えていくといいようです。特に糖質制限をやめる際は、ゆっくり行ってください。突然やめると、リバウンドが来ます。

一般的なケトジェニックダイエット
まとめ
長期間の糖質制限は、
●ケトアシドーシス
●甲状腺機能低下
●粘液の低下
●白血球の減少
のリスクがあります。
糖質を摂らない長期間のカンジダダイエットも、
●免疫機能にはある程度のブドウ糖が必要
●胃や腸の壁に粘液が必要
●断糖や極端な糖質制限は腸内環境に害
という理由で、避けた方がいいようです。
短期間、または断続的な糖質制限、ケトーシスになることは、
●痩せる
●炎症を抑える
●脳内の神経伝達物質のバランスを正常に保つ
●糖尿病・心疾患の予防
●がん治療
●外傷性脳損傷の改善
という理由で、利点があります。
短期間というのは1〜2週間、長期間は2週間以上が目安です。
短期間で行う場合も、十分な水分補給、ビタミン・ミネラルの補給、タンパク質の摂取、食物繊維の摂取は押さえておきたいです。
塩はミネラルの取り除かれていない自然塩をオススメします。
糖質制限、カンジダダイエット、ケトジェニックダイエットはデトックスとして行い、低糖の食事、特にレジスタントスターチを追加した食事を長期間続けると良い結果が得られると思います。
よく食事制限についてのサイトに「やりすぎは良くない」と書いてあるのは、このことかと思います。
・カンジダダイエットをしている人
・糖質制限をしている人
・ケトジェニックダイエットをしている人
・炭水化物ダイエットをしている人
・糖尿病の人
・糖質制限が危険になるケースを知りたい人