カンジダ症やリーキーガット症候群など、腸内環境が崩れカンジダ菌などの真菌に腸壁を傷つけられた場合、カンジダ菌を除菌することも大切な治療ですが、傷ついた腸を修復する必要もあります。
元々アスリートの人が筋肉をつけるために摂取していたグルタミン。
最近では、腸壁の損傷を修復する作用があるとして、カンジダ症やリーキーガット症候群の人に推奨されています。
この記事では、グルタミンとは何か、グルタミン酸との違い、グルタミンの効能、グルタミンを含む食べ物、グルタミン摂取で気をつける副作用、グルタミン摂取の際の5つの間違いについて説明しています。
グルタミンとは?
筋肉中に存在するアミノ酸の中で約60%を占めており、生体内で最も多く含まれるアミノ酸の一つです。
元々グルタミンはパウダーとして、ボディービルや筋トレをする人たち用に販売されていました。
脂肪を燃焼し、筋肉を構築する作用があるためです。
その後研究が進み、グルタミンは消化器系と脳の健康を促進することがわかってきました。
体内で生成できるため、必須アミノ酸ではありませんが、条件付き必須アミノ酸と呼ばれ、手術・外傷・感染などの際に大量に必要になり、食事からだけでは不足する傾向があります。
グルタミンは、動物性および植物性タンパク質の両方に含まれており、サプリメントからも摂取できます。
カゼインとホエイプロテインの両方に高レベルで含まれています。
グルタミンをを補充することで、タンパク質合成が促進され、正常なpHレベルのバランスが保たれます。
グルタミンとグルタミン酸は同じ?
グルタミンとグルタミン酸は異なるアミノ酸です。
グルタミンは上記で説明した通りで、グルタミン酸は昆布などに含まれるうまみ成分として調味料に使用されているアミノ酸です。
グルタミン酸から合成された「グルタチオン」の肝臓中での濃度維持にグルタミンが関与しているため、お互いの働きを補い合っている栄養素でもあります。
グルタミンの効能
1、腸の修復
過敏性腸症候群(IBS)、クローン病などの炎症性腸疾患、潰瘍性大腸炎、リーキーガット症候群、カンジダ症などで傷ついた腸壁を修復します。
グルタミンが炎症性サイトカインを刺激するTH2免疫応答の効果を正常化することを示した研究があります。
腸内の炎症が治まると、アレルギー症状が改善します。
2、脳の健康を促進
グルタミンは、脳内の神経伝達物質グルタミン酸の前駆体であるため、グルタミン欠乏によって神経伝達が機能しないと、ライ症候群、てんかん、双極性障害、統合失調症、不安、抑うつ、アルコール中毒など、あらゆる種類の脳の問題を引き起こす可能性があります。
グルタミンは脳の老化を遅らせるのにも役立ちます。
3、過敏性腸症候群(IBS)の改善
グルタミンは、腸内の粘液産生のバランスをとることにより、下痢を改善します。
4、筋肉の成長を促進
激しい運動をしていると、体にストレスがかかり、筋肉や腱には通常の食事よりも多くのグルタミンが必要になります。
激しいトレーニングの後、細胞のグルタミンのレベルは50%低下し、血漿レベルは30%低下します。
この筋肉を消耗する状態では、体が炭水化物からではなく筋肉からエネルギーを補給しようとします。
グルタミンにはこれを防ぐ作用があります。
5、脂肪を燃焼し、糖尿病を改善
グルタミンは、インスリンレベルの抑制と血糖値を調整することにより、脂肪を燃焼させ筋肉量を増加させます。
これにより、体はより少ない筋肉量を使い、細胞内の血糖値とインスリン感受性を維持することができます。
実際、1日に30グラムのグルタミン粉末を6週間補給することで、2型糖尿病患者の心血管リスク因子と体組成が著しく改善されました。
グルタミンは砂糖や炭水化物の渇望にも有効です。
6、アルコール代謝の促進
グルタミンにはアルコール代謝を促し、二日酔いを改善する効果があるといわれています。
グルタミン摂取が、二日酔いなどの原因物質であるアセトアルデヒドの血中濃度が低下させることが分かっています。
二日酔いに限らず、カンジダ症の人は、腸内で増殖するカンジダ菌がアセトアルデヒドを生成するため、症状悪化の原因になっています。
グルタミン摂取は、この状態を改善する作用があります。
7、傷の治癒促進作用
グルタミンは、傷の治癒に必要なたんぱく質の前駆物質となります。
そのため、外傷の回復を早める効果もあると言われています。
外科手術後などに、回復促進のため、グルタミンが処方されることもあります。
8、砂糖への渇望を抑制
グルタミンは、食欲に影響しているセルトニンというホルモンバランスを調節する作用があります。
また、グルタミンは、血糖値を下げる働きをするインスリンの感受性を調節する作用がある可能性も期待されています。
糖分過多な食生活が一般的になった現代では、血糖値の乱高下が日常茶飯事になっており、このことが神経伝達物質の低下を招きます。
グルタミンは体内でGABA(ガンマアミノ酪酸)に変換されますが、このGABAは、感情的な摂食と不安を軽減する神経伝達物質です。
グルタミンを含む食べ物
グルタミンは体内で生成できるアミノ酸ですが、特に激しい運動の際に消耗され不足したり、食生活の乱れのために腸内環境が悪化してカンジダ菌などが増殖、腸壁に損傷を与えるケースで不足します。
グルタミンは肉、乳製品などの動物性タンパク質、豆、ほうれん草(生)、パセリ、赤キャベツなどの植物由来のタンパク質源に含まれています。
グルタミン豊富な食品は以下の通りです。
●ボーンブロス(骨から出汁をとったスープ)
●グラスフェッドの牛肉
●スピルリナ(らせん形をした濃緑色の単細胞微細藻類)
●白菜
●キャベツ
●カッテージチーズ
●アスパラガス
●ブロッコリーレイブ(普通のブロッコリーよりも細長いブロッコリー)
●鱈(たら)
●サーモン
●鹿肉
●ターキー(七面鳥)
●アーモンド
●海藻類
●鰹節
グルタミンのサプリメント
副作用
グルタミンはアンモニアとグルタミン酸が結合することでも生まれますが、グルタミンからアンモニアとグルタミン酸が生まれることもあります。
グルタミンの過剰摂取がアンモニアの発生を引き起こすことがあり、疲労や悪臭の原因になります。
また、腸内環境が著しく悪い人、特に子どもでグルタミンに対し過敏症が出るリスクもあるようです。
副作用が出ないように、最初は少量から摂取して様子を見ましょう。
グルタミン摂取の際の5つの間違い
↑アメリカの「ハッピーマンモス」という健康食品会社のサイトから、「グルタミン摂取の5つの間違い」を紹介します。
1、摂取量
グルタミンのサプリメントに表記されている摂取量は、通常1日1〜2gとなっています。
これは健康なアスリートには適量ですが、腸内環境の問題がある場合、この量では少なすぎます。
研究では、腸内環境の悪い子ども達を2つのグループに分け、1つのグループは1日24gのグルタミンを摂取、もう一つのグループにはプラシーボの不活性薬物を10日間摂取してもらいました。
結果、グルタミンを摂取したグループに、顕著な腸内環境の改善が見られました。
様々な研究の結果、腸内環境が悪い人に推奨される1日のグルタミン摂取量は、
体重 X 0.5g
ということです。
体重が50kgの場合、25gのグルタミン推奨されます。
2、食事と一緒に摂取
グルタミンとグルタミン酸はお互いの働きを補い合っているアミノ酸であるため、一緒に摂取する方が効果があると思っている人が多いです。
しかし、グルタミンを他のアミノ酸と一緒に摂取すると、アミノ酸が先に体に吸収されようと競争するため、グルタミン吸収量が下がるという現象が起きます。
研究でも、手術後の患者を2つのグループに分け、食事と一緒にグルタミンを摂取したグループと、空腹時にグルタミンを摂取したグループを比較しました。
結果、食事と一緒にグルタミンを摂取したグループは、空腹時グループに比べ傷口の炎症が治まり、回復が早かったそうです。
別の研究では、食事と一緒にグルタミンを摂取したグループが、空腹時グループに比べより栄養を吸収した問いう結果があります。
3、グルタミンを暖かい飲み物と一緒に摂取
グルタミンは熱に弱いため、暖かい飲み物と一緒に摂取することにより、吸収が悪くなる可能性があります。
グルタミンを含む豆を加熱し、アミノ酸の変化を観察した研究によると、52℃でアミノ酸の重要な部分が完全に破壊されることがわかりました。
グルタミンは体全体に完全に吸収されない、グルタミンの有効性が低下します。
52℃と言うと、ぬるま湯くらいの熱さかと思いますが、それでも効果を失ってしまうようです。
グルタミンのサプリメントは、冷暗所に保管するようにしましょう。
4、グルタミン摂取は食事からだけで十分
食事から積極的にグルタミンを摂取することは大切ですが、他のアミノ酸がグルタミンと競合し、グルタミンの吸収率を下げるため、実際食事から摂取したグルタミンが全て吸収できていないということが起こります。
グルタミン含有量の例
卵100gあたり0.6g
牛肉100gあたり1.2g
100gの牛乳あたり0.3g
グルタミン含有量が高いように思われるかもしれませんが、実際に吸収されている量は、これよりも低くなります。
そして激しい運動するアスリート、腸内環境の問題がある人は、体重 X 0.5g のグルタミン摂取が好ましいため、サプリメントで補充することが大切になります。
5、グルタミンのサプリメントは粉末よりもカプセルがいい
毎日ゼラチンベースのカプセルを大量に摂取すると、肝臓と腎臓に負担がかかる場合があります。
また、従来のパウダーサプリメントよりも、体が分解して消化するのが困難です。
これは、すでに腸内環境の問題を抱えている場合にはさらに重要です。
血中のグルタミンを調べた研究では、粉末のグルタミン服用すると、毎日複数のカプセルを服用するよりも吸収率が高いことが示されました。
まとめ
カンジダ症やリーキーガット症候群など、腸内環境の問題を抱える人は、損傷を受けた腸壁を修復するためにも、グルタミンが大切ということを説明しました。
腸内環境の問題がある人は、 体重 X 0.5g のグルタミン摂取が推奨。
グルタミンは食事から摂取し、サプリメントでも補充。
サプリメントは粉末を選び、空腹時に冷たい水で摂取してください、ということでした。
カンジダ症治療のための食事療法「カンジダダイエット」と行う際、グルタミンは最初から摂取を始めて大丈夫ということです。
・カンジダ症の人
・リーキーガット症候群の人
・腸内環境が悪い人
・運動をする人