レジスタントスターチは、難消化性でんぷんとも呼ばれるでんぷんです。
通常のでんぷんは炭水化物の一種で、体に入ったら消化吸収されてブドウ糖になります。
通常のでんぷんは小腸で消化吸収されますが、レジスタントスターチは小腸で消化されず大腸まで届き、腸内細菌、特に善玉菌のエサになります。
でんぷんでありながら血糖値を上げにくく、善玉菌のエサになり腸内環境に重要な短鎖脂肪酸の生成を促進するレジスタントスターチは、健康維持に重要な役割を果たします。
この記事では、レジスタントスターチとは? レジスタントスターチの効能、レジスタントスターチを多く含む食品、レジスタントスターチ摂取の注意点について説明しています。
レジスタントスターチとは?
レジスタントスターチ(Resistant Starch)は、消化されにくいでんぷんです。
●血糖値を上げにくい
●インスリン感受性を改善する
●腸内環境を整える
●ミネラルの吸収を促進する
●不溶性食物繊維と水溶性食物繊維の特性をあわせ持っている
●カロリーが低い
●お腹が空きにくい
などの特徴があります。
RS1
雑穀のように硬い組織に囲まれていることで消化酵素がでんぷんまで届かないタイプ。
繊維状の殻があるため消化しにくくなっている穀物や豆類がこのタイプです。
ハイアミロースコーンスターチである「HI-MAIZE®」という加工でんぷんは、RS1とRS2を含みます。
アミロースの含有量が低いほど美味しくなりますが、アミロースの含有量が高いほど健康効果が上がるということになります。
アミロースの中でも特に消化されにくく大腸まで届くものが、レジスタントスターチになります。
RS2
十分に加熱されていない未糊化のでんぷんや、アミロースの極めて多いでんぷんなど、でんぷんの粒子自体が消化されにくいタイプ。
RS3
冷やご飯や春雨のように一度加熱されて糊化したあと、冷めたり保存する過程で一部のでんぷんが再結晶して消化されにくい構造に変化したタイプ。
ジャガイモやご飯を一度加熱してから冷ますことで、レジスタントスターチが約5%増えます。
RS4
加工でんぷんの一種で、でんぷんを高程度に化学修飾することで消化酵素が作用しにくくなったタイプ。
難消化性デキストリンなどの加工でんぷんがこれに含まれます。
とうもろこしのでんぷんをアミラーゼで加水分解し、難消化性成分を取り出した水溶性の食物繊維が難消化性デキストリンです。
日本人の食生活が欧米化し、食物繊維の役割が重視されるようになったため、不足しがちな食物繊維を補う目的で作られました。
ほとんどのでんぷん質の食品には、少なくとも少量のレジスタントスターチが含まれています。
レジスタントスターチの効能
1、血糖値を上げにくい
通常のでんぷんは摂取後、簡単に消化吸収され血糖値を急激に上げてしまいますが、レジスタントスターチは消化されにくく大腸で腸内細菌に発酵されるため、血糖値が上がりにくい性質があります。
2、インスリン感受性を改善する
普段から簡単に消化吸収される炭水化物を食べていると、常にインスリンが分泌されている状態が続き、インスリンの分泌に異常が出たり効きが悪くなったりします。
血糖値を上げずインスリンの分泌を誘発しないレジスタントスターチを摂取することで、インスリンの感受性が改善されることがわかっています。
この特性から、レジスタントスターチは2型糖尿病、冠状動脈性心臓病の治療のための減量食として可能性が注目されています。
研究ではレジスタントスターチがインスリン感受性を改善した結果が、女性に比べ男性に顕著に出たそうですが、理由はまだわかっていないということです。
3、腸内環境を整える
レジスタントスターチが大腸で腸内細菌に発酵されると、短鎖脂肪酸(特に酪酸)が生成されます。
短鎖脂肪酸は腸内環境を酸性にするため、アルカリ性に傾いたときに増殖するカンジダ菌などの成長を抑制できます。
そして短鎖脂肪酸は善玉菌のエネルギー源になるため、腸内環境を整えるためには重要な栄養素となります。
オリゴ糖や可溶性食物繊維も大腸で発酵され同じ働きをしますが、短鎖脂肪酸を作り出す量はレジスタントスターチが1番多いようです。
4、ミネラルの吸収を促進する
マウスを使った動物実験により、レジスタントスターチ摂取で短鎖脂肪酸レベルを上げることが、カルシウムやマグネシウムなどのミネラルの吸収を促進することがわかりました。
レジスタントスターチとイヌリン両方の摂取で相乗効果が期待できるようです。
特に吸収率が悪いとされるマグネシウムの吸収を促進することは、嬉しい効果です。
5、不溶性食物繊維と水溶性食物繊維の特性をあわせ持っている
不溶性食物繊維は、水に溶けにくく水分を吸収すると膨張します。
その特性から、腸の蠕動運動の促進、便のかさを増すなど、便秘に効果があります。
水溶性食物繊維は、水に溶けやすく腸内で水分を含むとドロドロしたゲル状になります。
こちらも便秘に効果があり、整腸作用もあります。
レジスタントスターチは食物繊維ではないのですが、この不溶性と水溶性の食物繊維両方の特性を合わせ持っています。
6、カロリーが低い
レジスタントスターチのカロリーは、通常のでんぷんに比べ半分になります。
7、お腹が空きにくい
レジスタントスターチの摂取は、食後の血糖値とインスリン感受性を改善し、血漿コレステロール、およびトリグリセリド濃度を低下させるため、満腹感を増加させます。
研究では、レジスタントスターチの摂取後にペプチド濃度が高くなることから、レジスタントスターチがペプチドを放出することに関連していると見ています。
2個以上のアミノ酸のペプチド結合によってできた化合物
レジスタントスターチを多く含む食品
上記のグラフが食品100gあたりのレジスタントスターチ含有量です。
これは平均値なので、値は変わることがあります。
一度加熱して冷ます方法
先ほど説明したRS3は、ご飯やジャガイモ、豆、パスタなどを一度加熱して冷ますことで得られます。
例えばジャガイモを茹でると、でんぷん質の構成要素であるアミロースとアミロペクチンが結晶構造を失い、吸水し粘り気のある溶液を形成して、小腸の酵素によりブドウ糖として消化吸収されます。(そして血糖値が上がります。)
しかし、このジャガイモを食べる前に冷ますと、それらの分子は再び強い水素結合で結晶構造を形成し、小腸の酵素が消化するのを非常に困難にします。
ご飯やジャガイモを食べて血糖値が上がりにくくなったことは助かりますが、いつも冷たいご飯を食べるのはちょっと嫌ですね…
再加熱してもいいのか?
調理して冷ましたでんぷんはレジスタントスターチ含有量が増えますが、再加熱しても大丈夫です。
「大丈夫です。」というより、再加熱でさらにレジスタントスターチが増えるようです。
この際、電子レンジでの再加熱は、レジスタントスターチのゼラチン化を阻害したことがわかったため、避けた方が良さそうです。
ご飯やパスタなど、でんぷん質の食品を加熱後に冷ます、温め直すことでレジスタントスターチ量が上昇し、血糖値スパイクが抑えられるようですが、電子レンジでの加熱では駄目ということです。https://t.co/3LNv39fh9W
— ユー子@カンジダ情報発信中 (@yuko_candida) February 5, 2020
レジスタントスターチ摂取の注意点
副作用
レジスタントスターチの1日当たりの摂取量の上限は約40〜45gですが、場合によってこれ以上摂取しても問題ない人もいます。
大腸にいる腸内細菌の発酵能力を超える量の摂取は、ガスや膨満感を引き起こす可能性があります。
特にSIBO(腸内細菌異常増殖症候群)で大腸ではなく小腸に腸内細菌が多い場合、副作用が出やすいと言えます。
RS3は、RS1、RS2、RS4と比べ、ガスや膨満感を引き起こしやすい傾向があります。
完全に避けるのではなく、症状が悪化しない程度に摂取し慣らしていくことが必要です。
その他
最初はレジスタントスターチ摂取に大腸の腸内細菌の発酵が追いつけなくても、摂取し続けることでだんだん発酵能力が上がってきます。
レジスタントスターチ摂取は、少量から始め、だんだん増やしていきましょう。
また、レジスタントスターチがより効果を示すには、
●液体より固体から摂取
●単独ではなく、食事と共に摂取
がいいようです。
加工食品からよりも、ホールフードからのレジスタントスターチ摂取を心がけましょう。
まとめ
レジスタントスターチの効能、レジスタントスターチを多く含む食品、レジスタントスターチ摂取の注意点について説明しました。
糖質大好きなカンジダ菌を除菌するカンジダダイエットをする際、はじめに糖質制限をしてある程度のカンジダ菌を殺しますが、そのあとは善玉菌を育てるため、プロバイオティクスとレジスタントスターチはしっかり摂取していくことが大切です。
この時、善玉菌を育てているので気が向いた時に摂取するよりは、毎日適量の摂取が推奨されます。
善玉菌が育つと、腸内の短鎖脂肪酸レベルが上がるので、自然とカンジダ菌は大人しくなってきます。
ダイエットのために糖質制限をする際も、カロリーゼロの人工甘味料入り加工食品でしのぐよりは、体にとってはレジスタントスターチをしっかり摂った方がいい結果になります。
↓レジスタントスターチ摂取のために、こちらの粉を小麦粉の代わりに使ったり、スムージーやスープに入れることも効果的です。
・腸内環境を整えたい人
・ダイエット中の人
・糖尿病の人
・糖質制限をしている人
・レジスタントスターチの効率的な摂取方法を知りたい人