お腹にガスが溜まりやすい・・・
ガスが上手く放出されず、お腹の中で行き場をなくし腹痛が・・・
胃痙攣が起きる・・・
ガスが臭う・・・
このような症状がある場合、SIBO(腸内細菌異常増殖症候群)、特に硫化水素SIBOの可能性があります。
この記事では、小腸で細菌が増殖することで起こるSIBOの中でも、硫化水素SIBOに焦点を当て、ガスが発生する要因、それに伴う症状、対策について説明しています。
SIBO(腸内細菌異常増殖症候群)とは?
SIBO(腸内細菌異常増殖症候群・Small intestinal bacterial overgrowth)とは、本来細菌があまりいないはずの小腸で、細菌が異常に増殖してしまい、お腹・消化器官に不調が出る病気です。
女性、特に年配の方に多く見られる傾向があります。
SIBOについては現在も研究段階で、あまりわかっていない部分もあるようですが、原因として、
●善玉菌、悪玉菌に関係なく、腸内細菌が間違った場所(小腸)で異常増殖したため
●善玉菌、悪玉菌に関係なく、腸内細菌の種類のバランスが取れていないため
と言われています。
また、IBS(過敏性腸症候群)の症状が出ている人のうち、約80%がSIBOに罹っているとみられています。
SIBOの症状
●腹痛(特に食後)
●膨満感
●胃痙攣
●便秘
●下痢
●消化不良
●腹鳴
●ガス
ガス
SIBOの症状の中でも、特にお腹にガスが溜まる問題に焦点を当てます。
1日14〜18回のおならは正常範囲です。
健康な人でも量にして、1日6〜8mlのガスが出ているそうです。
SIBOの疑いがあるガスは、
●ガスの量と回数が多い
●痛みを伴うガス
●腐卵臭のガス
になります。
ガスには、
●外因性ガス ー 空気を飲み込むことで発生するガス
●内因性ガス ー 腸内で細菌が生成するガス
の2種類があります。
外因性ガス
飲食時に一緒に飲み込まれた空気は、ほとんどがゲップになって放出されます。
ゲップにならなかった空気のほとんどは、小腸で吸収されます。
小腸で吸収されなかった空気は、腸の蠕動運動で大腸まで送られ、おならとして放出されます。
外因性ガスを誘発する要因
●早食い
●早飲み
●ガムを噛む
●喫煙
●ゆるい入れ歯
内因性ガス
SIBOの原因になっているのは、この内因性ガスです。
腸内ガスの主要成分は、酸素、窒素、二酸化炭素、水素、メタンがあります。
消化酵素の不足などで未消化の食べ物、特にでんぷんや炭水化物の糖が腸に行った場合、腸内細菌がそれらを発酵させると、水素と二酸化炭素が生成されます。
SIBOで特定のガスが過剰に生成されている場合、どの種類のガスの割合が多いかによって3つに分類されます。
●硫化水素SIBO
●メタンSIBO・IBS-C
●水素SIBO
自分がどのSIBOであるかどうかを知るには、牛乳を加熱した際に生じるラクツロース摂取後に小腸内の細菌によって生成される水素およびメタンガスを測定する、呼気検査があります。
この呼気検査では、ピロリ菌の感染、乳糖不耐症も診断することができます。
硫化水素ガスは検知できないという特徴がありますが、水素とメタンの濃度が少ない、またはほとんどない場合、硫化水素がガスのほとんどの割合を占めると判断します。
硫化水素SIBO
腸内で発生するガスの成分で、硫化水素の割合が多い場合、硫化水素SIBOであると言えます。
硫化水素
硫化水素は、無色のガスで腐った卵の特有の臭いがします。
自然界では、温泉、火山、天然ガス、原油などに含まれます。
また、人間や動物の便にも含まれます。
自分のガスからたまに腐卵臭がするのは正常な範囲ですが、常に、または頻繁に腐卵臭がある場合、硫化水素SIBOの可能性があります。
人間の体は、少量の硫化水素を必要とします。
炎症、記憶形成、認知、エネルギー、腸の運動性などに関わってきます。
しかし、硫化水素SIBOのように過剰な硫化水素が生成されると、ガスや膨満感以外の症状につながる可能性もあります。
硫化水素SIBOが悪化した場合に現れる可能性がある症状
●ブレインフォグ
●記憶力の低下
●酒さ
●疲労
●下痢
●便秘
●リーキーガット症候群
●硫黄食品に対する不耐性
●歯周病と口臭
硫化水素SIBOでは、硫化水素を産生する細菌は、水素ガスを消費する際にメタンを産生する細菌と競合します。
体内で硫化水素が過剰に産生される場合、硫黄が関係していることがあります。
硫黄
硫黄は必須アミノ酸のメチオニン、システインの成分で、体の組織を作る働きを持ったミネラルです。
●タンパク質の合成
●コラーゲンの生産を促進
●細胞と動脈壁の構造を維持
●ケラチンの成分
●髪、肌、爪の強化
硫黄は、ほとんどの人が食事から必要な量を摂取できていますが、体が硫黄を代謝できていない場合、以下の症状が現れることがあります。
●関節炎
●関節リウマチ
●変形性関節症
●乾癬性関節炎
●にきび
●乾癬
●いぼ
●フケ
●湿疹
●毛包炎
硫黄代謝に問題を引き起こす原因として考えられるのは、
●化学物質からの毒性(例、ラウンドアップで使用される除草剤グリホサートなど)
●栄養補助因子
●遺伝
食事から硫黄を摂取した際、体内で硫黄(S)は酸素(O2)と結合し、硫酸塩(SO2)を形成します。
硫酸は、血液の粘性を維持したり、結合組織の内側を覆うなど、体内で発生する多くのプロセスで重要な役割を果たします。
人間の体は、適切に機能するために硫酸塩の一定の供給を必要とします。
体内で硫黄代謝が機能せず、硫酸塩が欠乏した場合、体は硫化水素(H2S)を産生する細菌の成長を促進する環境に適応し、硫化水素ガスと亜硫酸塩を使用して必要な場所で硫酸塩を生成する戦略を取ります。
硫化水素SIBOについては、現在も研究段階でわかっていないことが多いのですが、この説が有力です。
硫化水素SIBOの対策
ご自分が「硫化水素SIBOかも…」と感じた場合、できることがいくつかあります。
1、硫黄を含む食品を避ける
硫黄の含有量が高い食品は、以下の通りです。
●卵
●ニンニク
●ケール
●アスパラガス
●タマネギ
●ネギ
●エシャロット
●ドライフルーツ
●ブロッコリー、カリフラワー、芽キャベツなどのアブラナ科の野菜
●マスタード
●ビール
●ワイン
●カラギーナン(増粘・ゲル化剤として使われる添加物)
●MSM(メチル・スルフォニル・メタン、有機硫黄)
●ターメリック
●ピーナッツ
●動物性たんぱく質(アミノ酸システインとメチオニンを含むため)
硫黄を含む食品の摂取量を短期間でも減らすと、硫黄代謝経路の詰まりを解消できる場合があります。
上記の食品を一定期間避けた後に一度食べてみて、SIBOの症状、特にガスが悪化するかどうかを観察してください。
また、長期間硫黄を避けることで、体にとって再度硫黄代謝するための休息になり、正常な硫黄代謝ができるようになることがあります。
お肉はたまに少量食べる分には問題ないようです。
含有量は低いが、硫黄を含む食品
●ご飯(白米も玄米も硫黄含有量はほぼ同量)
●ジャガイモ
●魚
●ニンジン
●セロリ
●マッシュルーム
●ズッキーニ
●カボチャ
●きゅうり
●鶏肉
●ショウガ
●果物
これらの食品は、食べ過ぎなければ問題ないようです。
2、エプソムソルトバス
エプソムソルトは、硫酸マグネシウムで硫酸塩とマグネシウムの化合物が結晶化したものです。
見た目は塩に似ていますが、しょっぱくはなく塩ではありません。
↓エプソムソルトについては、別の記事で詳しく書いています。
硫化水素SIBOのため体内で硫黄代謝が機能せず、硫酸塩が欠乏している状態に、経皮吸収という形で硫酸塩を補給することができます。
上記の記事では、2カップのエプソムソルトをお風呂に入れて入浴すると書いていますが、硫化水素SIBOの方は、その2倍の4カップをお風呂に入れ、それを最低7日間連続で続けてください。
その後もできるだけエプソムソルトバスに入り、体内の硫酸塩レベルを維持してください。
3、モリブデン
微量ミネラルのモリブデンは、硫黄代謝を助ける働きをします。
通常食事から十分に摂取できているモリブデンですが、SIBOの方は欠乏の疑いもあるようです。
↓モリブデンについては、こちらの記事で詳しく説明しています。
4、レモングラスオイル
レモングラスオイルは、いくつかの研究でその有効成分であるシトラールが、硫化水素SIBOの原因細菌に対して抗菌効果があるということが示されています。
食用グレードのレモングラスオイルを、水に数滴入れて食事前に飲みます。
5、ビスマス
ビスマスは、日本語で蒼鉛(そうえん)と呼ばれるミネラルです。
腸内の炎症を緩和する作用があり、整腸剤として使われます。
硫化水素SIBOでガスの量が異常に多い人は、ビスマス摂取で便が黒くなることがよくあります。
硫化水素SIBOの疑いがある場合、ビスマス摂取で便が黒くなるかを見て判断することもできます。
ビスマスの長期的摂取は避け、重症な症状を緩和したいときにだけ使うようにしてください。
6、天然の抗菌剤
SIBOに効果がある天然の抗菌剤は、以下の通りです。
●ベルベリン
●ニームオイル
●オレガノオイル
7、ヨガ
ヨガのハッピーベイビーのポーズは、腸の蠕動運動を促進します。
ヨガ以外にも、散歩、サイクリングなども蠕動運動を促進します。
8、その他、SIBOの対策
硫化水素SIBOに特定した対策を紹介してきましたが、通常のSIBO対策も取り入れてください。
プロバイオティクス摂取
「SIBOは腸内での細菌の増殖だから、プロバイオティクスはSIBOを悪化させる。」という意見があります。
これはSIBO患者が実際にプロバイオティクス摂取後にガスの症状が悪化する経験から言われることが多く、専門家は「SIBOでもプロバイオティクス摂取は推奨」という意見が多いと感じます。
SIBOとプロバイオティクスの研究でも「プロバイオティクスがSIBOに有効」と断言できる結果はまだないようです。
それでも↓こちらの研究では、
豆類、アルコール、葉物野菜、乳製品を制限した食事を摂るSIBO患者を2つのグループに分け、一方にプロバイオティクスを投与、もう一方に抗生物質を投与したところ、プロバイオティクスのグループでは82%の患者に改善が見られ、抗生物質のグループでは52%の患者に改善が見られました。
使用したプロバイオティクスの菌株は、
●ラクトバチルスカゼイ
●ラクトバチルスプランタルム
●ストレプトコッカスフェカリス
●ビフィドバクテリウムブレビス
↓こちらの研究では、
SIBO患者にラクトバチルスカセイのプロバイオティクスを6週間投与。
患者の64%が、呼気検査でSIBO陰性と出ました。
SIBOの方がプロバイオティクスを摂取する場合、気をつけた方がいい事があります。
1、CFU(菌の数)が少ないものから始め、徐々に増やす
プロバイオティクス摂取を始めたばかりは、症状が悪化することがよくあります。
症状悪化がひどい場合は一旦摂取をやめ、違う種類を試してみます。
2、避ける添加物
●乳糖
●でんぷん
●大豆
これらの添加物がサプリメントに含まれている場合、その製品は避けましょう。
3、自分に合ったプロバイオティクスを探す
他のSIBOの人に効果があったプロバイオティクスが自分にも合うかはわかりません。
いくつか違う種類のものを試してみて、自分に合っているものがあれば、それを毎回購入します。
ほとんどの乳酸菌、ラクトバチルスは牛乳など動物性のもので培養されますが、SIBOの人にはココナッツミルクなど植物性のもので培養されたものの方が合う場合もあるようです。
4、発酵食品よりもサプリメント
SIBOの人で、特にヒスタミン不耐性がある人は、発酵食品に含まれるラクトバチルスに反応しない傾向にあるようです。
iHerbのプロバイオティクスで、植物性であり、SIBOを悪化させる添加物が含まれていないものが、以下の製品です。↓
SIBOの場合避けた方がいいプロバイオティクスと、SIBO悪化のリスクがある成分
Jarro Dophilus デキストリン・タピオカスターチ・乳・大豆
Florastor 乳糖
Align 乳糖
Culturelle イヌリン
Jarrow Ideal Bowel Support 片栗粉・大豆
Pears YB ペクチン
Probio Pure’s ライススターチ pic.twitter.com/dZiP11LfAU— ユー子@カンジダ情報発信中 (@yuko_candida) February 14, 2020
消化酵素摂取
↓消化と消化酵素については、別の記事で説明しています。
食物繊維摂取
食物繊維摂取で一時的に症状が悪化する場合がありますが、全く摂らないと長期的にSIBOの症状が悪化します。
少量から始めてください。
SIBOの場合も、飛行機に乗ることでガスが膨張し、お腹に圧迫感を感じることがあります。
対策として、飛行機に乗る前は一時的に食物繊維を避けた方が無難ですが、SIBO改善のため、長期的には摂取してください。
レジスタントスターチの摂取
レジスタントスターチとは、小腸では消化されず、大腸まで届くでんぷんのことです。
小腸の菌のエサにはならないので、摂取しても症状の悪化を避けられます。
低FODMAP食
FODMAPは、fermentable(発酵性の)、oligosaccharides(オリゴ糖)、disaccharides(2糖類)、monosaccharides(単糖類)、and polyols(ポリオール)の略です。
↓FODMAPが多い食品・少ない食品のリストがあります。
ゆっくりよく噛んで食べる
よく噛むことで食べ物が小さく分解されることはもちろん、噛むことで分泌される唾液には消化酵素が含まれます。
食べ過ぎない
常に食べ過ぎる癖がついていると、消化器官を常に働かせていることになるため、消化器官に炎症が起きやすい状態を作ってしまいます。
胃を酸性に保つ
アップルサイダービネガーを水で薄めて飲むことは、消化器官を酸性に保ちます。
特に食前に飲むと、食べ物が胃に入ってきた時に、胃酸が消化することを促進できます。
まとめ
小腸で細菌が増殖することで起こるSIBOの中でも、腐卵臭で量の多いガスが問題になる硫化水素SIBOに焦点を当て、ガスが発生する要因、それに伴う症状、対策について説明しました。
個人個人で合う食べ物、合う菌が異なるため、SIBOの治療は解決策を探すことに時間がかかりますが、コツコツやっていくことが大切なようです。
メタンSIBO・水素SIBOについては、後日別に記事を書きたいと考えています。
・SIBOの人
・ガスの問題で困っている人