医療現場での傷口の洗浄に生理食塩水が使われたり、風邪をひいたときに塩水でうがいをすると喉の炎症の殺菌になったりと、塩には殺菌の効果があります。
「医学の父」とも呼ばれる、古代ギリシャのヒポクラテスも、様々な症状に対し海水に浸かる治療法を用いていたようです。
アトピー性皮膚炎を発症している肌を海水に浸けると症状が改善するという話も聞きますが、なぜ塩は肌にいいのでしょう?
どんな塩でも肌にいいのでしょうか?
この記事では、バスソルトとして使われることが多いエプソムソルトと死海の塩の違い、それぞれの効能、ソルトバスのやり方、注意点を説明しています。
エプソムソルト vs 死海の塩
お風呂に塩を入れて入浴するソルトバス。
ソルトバスによく使われる塩が、エプソムソルトと死海の塩(デッドシーソルト)です。
エプソムソルト
欧米では一般的なエプソムソルトは、ドラッグストアや量販店、スーパーなどで安価で購入できます。
エプソムソルトという名前ですが、「塩」ではありません。
硫酸マグネシウムという、硫酸塩とマグネシウムの化合物が結晶化したもので、海水や温泉にも含まれている成分です。
1618年、イギリス・ロンドンから約20キロ離れたエプソム地方の牛飼いヘンリーは、水が不足する夏に、牛の足跡で地面が窪んだ場所に水が溜まることに気づきました。
その水を牛に飲ませようとしたところ、牛が飲むことを拒否したため、ヘンリー自信がその水を飲んでみました。
水は苦い味がしましたが、ヘンリーはこの水に浸かった牛の傷の治りが速いこと、飲むと下剤の作用を示すことに気づきます。
見た目が塩に似ているため、エプソムソルトと呼ばれるようになりましたが、エプソムソルトには食塩(塩化ナトリウム)は含まれません。
エプソムソルトの効能
1、マグネシウムの補給
現代人には不足している傾向があるマグネシウム。
マグネシウムには、
●代謝を助ける働き
●たんぱく質の合成
●骨を強くする作用
●正常な神経系の維持
●血糖値の調節
などの作用があります。
カンジダ症など腸内環境の問題を抱える人にとっては、カンジダ菌が放出するアセトアルデヒドという毒素を分解することにマグネシウムが必要なので、とても大切な栄養素になります。
アセトアルデヒドが分解されないと、
●ブレインフォグ
●頭痛
●集中力の低下
などの症状が出ます。
2、ストレス解消効果
神経系にも深く関係するマグネシウムは、不足することでストレスレベルが上がることにつながります。
また、細胞内でのエネルギー生産に不可欠に不可欠なマグネシウムを摂取することで、疲労回復の作用にもなります。
3、デトックス効果
エプソムソルトバスに浸かることで、浸透圧が働き、体内の水分が肌の膜から排出されます。
その際、重金属などの毒素も体外に排出されます。
4、便秘の改善
これはエプソムソルトバスに入る効能ではなく、エプソムソルト水を飲んだ場合の効能になります。
エプソムソルト水を飲むことには賛否両論あるようですが、飲用後30分〜6時間以内に下剤を飲んだような作用が来るそうです。
これによって腸内の老廃物も体外に排出される効果があるそうです。
下剤と同様、エプソムソルトは長期的に飲むものではありません。
また、脱水症状を起こさないように、たくさんの水分も一緒に摂取することが必要です。
便秘解消のためにエプソムソルト水を飲む場合、コップ1杯の水に、スプーン1杯のエプソムソルトを混ぜて一気に飲みます。
苦い味を隠すため、レモンジュースを入れる人もいるようです。
4時間待ってもお通じない場合は、もう1度飲みます。
5、抗炎症作用
エプソムソルトバスは、炎症や痛みを和らげる作用もあります。
筋肉痛、関節炎、頭痛にも効果があるそうです。
欧米の医療機関では、産後の膣の回復や痔の改善のために、エプソムソルトバスを推奨しています。
お風呂、またはお尻が入る大きさの洗面器にエプソムソルト濃度が3.5%くらいのお湯との溶液を作り、患部を浸します。
6、血糖値の調節
エプソムソルト溶液の飲用、エプソムソルトバスの両方で血糖値を調節する効果を得ることができます。
エプソムソルトに含まれる、マグネシウムが糖尿病を改善させる作用を持ちます。
7、ヘアケア
エプソムソルトを混ぜたお湯で髪の毛をすすぐ事によって、皮脂の汚れや過剰なオイルを洗い流すことができます。
地肌のデトックス効果も期待出来るかもしれないです。
8、喘息の改善
急性および重度の喘息の処置に硫酸マグネシウムが使われるため、エプソムソルトバスに浸かる事によって、喘息の症状の改善を期待する意見もあります。
9、高血圧の改善
エプソムソルトの硫酸マグネシウムに血管拡張作用があるため、血行を促進する作用があります。
10、植物の健康も促進
エプソムソルトはガーデニングにも使われます。
野菜や花を植える際に土に振りかけたり、4Lの水とスプーン1杯のエプソムソルトを混ぜた溶液を、葉や開花したばかりの花にスプレーでかけてあげると、植物の成長を促進します。
エプソムソルトバスのやり方
浴槽にお湯をため、2カップのエプソムソルトを入れます。(濃度0.1〜0.2%くらいになるように。)
15〜20分ほど浸かります。
入浴後の体は流しても流さなくてもいいようです。
お湯の中で溶けずに残っていたエプソムソルトが肌に残っていた、ということがないように、タオルでよく拭きます。
注意点
●入浴前と後に十分な水分補給をする
●入浴は長すぎず、短すぎず
●お湯の温度は体温より少し高い38〜40℃くらい
温度が高すぎると、ミネラルの吸収が悪くなるそうです。
●エプソムソルトバスに入ったことで、湿疹などのアレルギー反応が出た場合は、入ることをやめる
●シプロフロキサシンやジギタリスなどの心臓の薬とエプソムソルトが拮抗作用を示す場合があるようです。薬を服用されている方は、専門家に相談してください。
腐った卵のような臭いのガスにお困りの方は、エプソムソルトがガスの対策になるかもしれません。
詳しくは、↓こちらの記事をご覧ください。
死海の塩(デッドシーソルト)
ヨルダンとイスラエルにまたがるヨルダン渓谷にある、地球上最も低い海抜マイナス400メートルに位置する死海。
海ではなく湖である死海は、川から塩を含む鉱物が混ざる水が流れてくるため、海以上に塩分濃度が濃い湖です。
死海の周辺には高級スパリゾートが立ち並ぶほど、何世紀にも渡って世界中の人々が訪れるリラクゼーションスポットです。
エプソムソルトと死海の塩の違いは、その成分です。
エプソムソルトが硫酸マグネシウムでできていることに対し、死海の塩は塩化ナトリウム(12〜18%)に加え、塩化マグネシウムと塩化カリウムが豊富なことです。
その他にも、カルシウム、硫黄、ブロマイド、ヨウ素、ナトリウム、亜鉛など、21種類のミネラルを含みます。
エプソムソルトにはない死海の塩の効能
1、殺菌作用
冒頭で述べたように、塩には殺菌作用があり、傷口の洗浄などに生理食塩水が使われます。
肌や頭皮にいるカビが原因でアトピー性皮膚炎は脂漏性湿疹を発症している場合、デッドシーバスに浸かることで、菌を殺菌する効果があります。
エプソムソルトでも殺菌作用を宣伝しているものもありますが、これは研究結果の裏付けが少ないようです。
死海の塩の殺菌作用についての研究結果はいくつかあるそうです。
2、ミネラルが豊富
エプソムソルトは、マグネシウムと硫酸塩のみを含むことに対し、死海の塩は何種類ものミネラルを含みます。
死海の塩に含まれるミネラル
●ナトリウム
●マグネシウム
●カルシウム
●アルミニウム
●鉄
●亜鉛
●カリウム
●チタン
●硫黄
●リン
●ブロマイド
死海の塩のミネラル含有量は、季節、気温、雨量、採取された場所の深さなどで微妙に変わるそうです。
特にエプソムソルトには含まれないナトリウムは、デッドシーバスの浸透圧で体内のアレルゲンを含む老廃物と毒素入りの水分を排出させた後に、角質を引き締め、肌のバリア機能を高めることと、肌の水分を保持してくれる作用があります。(マグネシウムにもこの作用があります。)
そしてアトピー性皮膚炎患者が不足している傾向にある亜鉛。
死海の塩には、細胞増殖の酵素の調節に必要な、亜鉛も含まれます。
塩水に浸かることは、肌が乾燥してしまいそうなイメージがありますが、それはミネラルが取り除かれた食卓塩をお風呂に入れた場合の話です。
食卓塩のソルトバスも、浸透圧で体から水分を排出させる効果がありますが、ミネラルがないため、肌のバリア機能が回復されない、肌の水分が保持されないということが起こります。
ミネラルが豊富な死海の塩は、肌から水分と老廃物を排出させると同時に、ミネラルが肌のバリア機能を回復させるため、脱水症状や乾燥肌になりにくく、むしろ肌がみずみずしくなります。
肌のpHを整えてくれる作用もあるそうです。
デッドシーソルトバスのやり方
浴槽にお湯をため、大さじ4杯の死海の塩を入れます。
エプソムソルトがサラサラしているのに対し、死海の塩は水分を含みやすいため、お好みのエッセンシャルオイルを混ぜてバスソルトとして使うこともできます。
15〜20分ほど浸かります。
シャワーで体を流し、タオルでよく拭きます。
死海の塩を使った足湯も、特に水虫などに効果があります。
注意点
●入浴前と後に十分な水分補給をする
●入浴は長すぎず、短すぎず
●お湯の温度は体温より少し高い38〜40℃くらい
温度が高すぎると、ミネラルの吸収が悪くなるそうです。
●ミネラルが取り除かれて販売されている死海の塩もあるので注意
●週に3〜4回のデッドシーソルトバスの入浴を、最低3〜4週間続ける
アトピー性皮膚炎の人が海水浴に行って症状が改善しても、一時的な改善で、またすぐに湿疹が出てきてしまうという話を聞きます。
デッドシーソルトバスの継続と、体に毒素を入れない食生活が大切です。
●死海の塩の濃度は、低すぎると効果が出ないようです。
リウマチ患者にデッドシーソルトバスに入ってもらった研究では、濃度2〜7.5%で効果が見られましたが、0.5%では効果が見られなかったそうです。
まとめ
アトピーや炎症からストレスの解消まで、様々な症状に効果があるソルトバス。
精製された食卓塩のソルトバスでは有益な効果は得られませんが、ミネラルを豊富に含む死海の塩、塩分は含まないけどマグネシウムが豊富なエプソムソルトを使うことで、様々な効能を得られるということを紹介しました。
エプソムソルトと死海の塩、どちらがいいのか?
という問題ですが、効能を見ると、やはりたくさんのミネラルを含む死海の塩がいいと言えます。
ただ、安価なエプソムソルトに比べ、死海の塩はお値段が数倍するので、選ぶ際はそこら辺も考慮したいところです。
私は死海の塩をお風呂に入れる際、お湯に溶かす前に肌にすり込むようにスクラブしていますが、スクラブした箇所はすべすべになります。
エプソムソルトでも試したことがありますが、死海の塩でのすべすべさは得られませんでした。
そして私は低体温で冷え性なんですが、個人的には、デッドシーソルトバスの方がエプソムソルトバスに比べ体が温まっている時間が持続するような気がします。
デッドシーソルトバスの残り湯を植物にあげてもいいのかという記述は見つけられなかったのですが、死海の塩、ぜひ1度試してみてください。
また、他の天然塩、ヒマラヤピンクソルトやケルト海塩、リアルソルトなどもミネラルが豊富なため、同じ効果が期待できます。
水道水に入っている塩素は、肌の有用菌を殺菌すると同時に、肌から吸収され腸内の有用菌も殺してしまう可能性があるため、ソルトバスに入る場合も、水道水から塩素を除去した方が肌にはいいです。
塩素除去のフィルターを使うか、それが困難な場合は、ビタミンCが塩素を中和します。
↓粉末のビタミンCです。
・バスソルトに使う塩の違いを知りたい人
・ミネラルが不足している人
・アトピー性皮膚炎の人
・デトックスに興味がある人
・体に炎症の症状がある人
・ストレスがたまっている人