野菜はヘルシーなイメージがありビタミンやミネラルなどの栄養素が豊富ですが、同時に毒素も含みます。
その毒素の一つ、「シュウ酸」は緑の葉物野菜、ナッツ類などに多く含まれ、体内でミネラルと結合し結晶を形成します。
この結晶が腎臓に溜まったものが腎臓結石ですが、この結晶は腎臓以外でも体じゅうのあらゆるところに蓄積し、細胞を損傷、炎症を引き起こします。
「シュウ酸って何?」という方は、先にこちらの記事をご覧ください。
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健康に気を使いプラントベースダイエット、ケトジェニックダイエットなどを長く続けている人、腸内環境の問題がある人は特に、体内にシュウ酸塩が蓄積している可能性があります。
現在、激痛など分かりやすい症状はなくても、ある日突然問題が出る可能性があります。
この記事では、体内に蓄積したシュウ酸塩の排出の方法、排出の際に起こるオキサレートダンピングという症状、その対策について説明しています。
ガラスの破片のようなシュウ酸塩が体内から排出されることにより、長年の炎症が解消される可能性があります。
体内にシュウ酸塩が蓄積しているサイン
体内にシュウ酸塩が蓄積しているかを知る方法は、
●尿検査
●血液検査
●X線、CTスキャン
などがありますが、尿検査と血液検査はあまり正確ではありません。
X線、CTスキャンも大きいサイズの結石しか検出できず、被曝の問題があるため、あまりオススメしません。
以下の兆候がある場合、シュウ酸塩が蓄積している可能性があります。
1、腎臓結石
腎臓結石は、一般的にシュウ酸が原因になっていると認識されています。
シュウ酸カルシウムによって引き起こされるものが症例の約75〜80%を占めています。
尿中のカルシウムとシュウ酸塩の濃度が高くなりすぎて希釈できない場合に発生、腎臓にシュウ酸カルシウムの結晶が形成されます。
尿が酸性に傾くことで結晶化が促進されます。
時間が経つと結晶は成長し、痛みを伴う腎臓結石になります。
●膀胱炎
●尿道炎
●排尿時の痛み
●頻尿
●尿の濁り
●血尿
これらの症状もシュウ酸塩の蓄積が疑われます。
2、甲状腺機能低下症
体内のシュウ酸塩のレベルが高くなると、体はシュウ酸塩の一部を別の臓器に振り分けようとします。
甲状腺はシュウ酸塩が蓄積しやすい器官です。
実際甲状腺の研究では、成人の約79%の甲状腺にシュウ酸塩の結晶が見つかったことが示されました。
患者が年をとるほど、結晶は甲状腺に集中していました。
結晶が甲状腺で成長するにつれて、それらは機能不全を引き起こし始め、最終的に甲状腺機能低下症につながります。
●皮膚の乾燥
●喉付近の腫れ
●元気がない
●疲れやすい
●まぶたが腫れぼったい
●冷え性
●体重増加
●動作が遅い
●いつも眠たい
●もの覚えが悪い
●便秘
●かすれ声
これらの症状があれば、甲状腺機能低下症の可能性があり、シュウ酸塩が原因とも考えられます。
3、外陰部痛
外陰部痛は女性で一般的なシュウ酸塩蓄積の症状で、慢性的な炎症と痛みを引き起こす障害です。
「出産以上の痛み」と表現する人もいます。
4、線維筋痛症
線維筋痛症は生理学的な原因がないように見え、全身の筋肉や関節の痛みやしびれを特徴としています。
この痛みは、患者の生活の質を損なう可能性があり、
●慢性疲労
●ブレインフォグ
●鬱
●ホルモンの不均衡
●不眠症
●頭痛
を伴う可能性があります。
低シュウ酸塩の食事療法で、線維筋痛症が改善した例がいくつかあります。
5、カンジダ症
シュウ酸塩は野菜など植物に含まれるほか、人体でも肝臓代謝の副産物として少量生成されます。
さらにもう1つの供給源として、真菌やカビの胞子によっても生成されます。
このことから、カンジダとシュウ酸に関係性があることがわかります。
カンジダの異常増殖を抑えるカンジダダイエットをしている人は、高シュウ酸食が摂取が多く、抗菌作用のあるハーブやサプリメントを使用しても効果が出ない場合は、シュウ酸塩の蓄積が疑われます。
●リーキーガット症候群
●IBS(過敏性腸症候群)
●IBD(炎症性腸疾患)、潰瘍性大腸炎、クローン病など
●SIBO(小腸内細菌異常増殖症)
これらの疾患にも同じことが言えます。
●シュウ酸塩分解菌オキサロバクター・フォーミジェネスは母乳に含まれていないため、乳幼児はシュウ酸の分解が困難
●ラクトバチルス・アシドフィルスもシュウ酸塩分解菌
●ラクトバチルス・アシドフィルスは過剰なシュウ酸によって死ぬ
●プロバイオティクスの乳酸はシュウ酸塩と結合し、除去を促進— ユー子@カンジダ情報発信中 (@yuko_candida) October 30, 2020
6、痛風、関節リウマチ
関節もシュウ酸塩が蓄積しやすい部位です。
小さい先の鋭い結晶が関節に蓄積し、いつまでも治らない関節炎を引き起こします。
7、手や足の灼熱感やうずき
シュウ酸塩が原因で、手や足の灼熱感やうずきを経験することがあります。
手足だけでなく、シュウ酸塩の結晶は、皮膚から出てくることもあります。
この際ヒリヒリするような痛みが伴います。
目や歯茎から出てきて、痛みや出血を引き起こすこともあります。
8、栄養欠乏
マイナスの電荷を帯びるシュウ酸は、
Ca2 +(カルシウム)
Mg2 +(マグネシウム)
Zn2 +(亜鉛)
Fe2 +(鉄)
などのプラスに帯電したイオンと結合しやすい性質があります。
これにより、体内のミネラルバランスが崩れ、貧血などの栄養欠乏の症状が引き起こされます。
またシュウ酸塩は、硫黄、重炭酸塩、塩化物などと輸送チャネルを競合することから、代謝機能を低下させる可能性もあります。
体内に蓄積したシュウ酸塩の排出の方法
シュウ酸塩の排出は、できればこの問題に詳しい専門家の指導の元に行うことが安全です。
残念ながら、一般の医師はシュウ酸が様々な体調不良に関連していることを認識していない場合が多いです。
ネット上でもシュウ酸塩排出をしている人の記述は少なく、英語でしたらシュウ酸の研究をしている生物医学者、スーザン・オーウェンズさんが管理するFacebookグループ「TryingLowOxalates」があります。
1、低シュウ酸ダイエット
体内に蓄積したシュウ酸塩の排出のメインは、高シュウ酸食品をできるだけ避ける「低シュウ酸ダイエット」を行うことになります。
※ここでいう「ダイエット」は、痩身や体重を落とすダイエットではありません。
シュウ酸摂取を抑えることにより、血中シュウ酸濃度が低下、細胞がシュウ酸塩を放出します。
これは体が環境的毒素に対して持つ一般的なメカニズムで、オキサレートダンピング(Oxalate Dumping)と言います。
デトックスが肝臓を使って毒素を排出することに対し、オキサレートダンピングは肝臓を使いません。
食品のシュウ酸含有量
体内のシュウ酸塩を排出するためには、まず高シュウ酸食品をできるだけ避けます。
シュウ酸含有量は同じ植物でも部位によって異なるので、上記の表は大体の目安にしてください。
(間違っている数値があるかもしれないので、この表は無断転載しないでください。)
特に記載がないものは、生の食品です。
不溶性シュウ酸は、
●加熱調理
●浸水
●発芽
●発酵
をしても無くなりません。
ただし、下茹では茹で汁に可溶性シュウ酸が溶け出すので、茹で時間によってはある程度シュウ酸レベルを下げられます。
低シュウ酸食品
低シュウ酸ダイエットで食べることができるシュウ酸含有量が比較的低い食品は以下の通りです。
具体的な含有量まではわかりませんでした。申し訳ございません。
●肉
●魚
●シーフード
●卵
●チーズ
●バナナ
●さくらんぼ
●ココナッツ
●スイカ
●グレープフルーツ
●マンゴー
●ネクタリン
●パパイヤ
●アーティチョーク
●キャベツ
●カリフラワー
●きゅうり
●キノコ類
●ラディッシュ
●かぼちゃ
●ズッキーニ
●赤ピーマン
●アルファルファ
2、プロバイオティクス摂取
低シュウ酸ダイエットとともに、プロバイオティクスを摂取します。
プロバイオティクスは発酵食品やサプリメントで摂取することができます。
こちらのプロバイオティクスは菌種が多めでラクトバチルス・アシドフィルスが配合されているのでオススメです。
プロバイオティクスは、ご自分に合った製品ならなんでもいいと思います。
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シュウ酸分解菌であるオキサロバクター・フォーミジェネスを含むプロバイオティクスは現在ありません。
この菌は、他の乳酸菌やビフィズス菌が腸に定着し乳酸を産生することによって増えます。
ヨーグルト、ケフィア、プロバイオティクスの摂取が有効です。https://t.co/mvrItxnIXO
— ユー子@カンジダ情報発信中 (@yuko_candida) October 30, 2020
3、レモン水摂取
尿の濃度が濃くなると、腎臓に結晶が蓄積しやすくなるため、十分な水分補給が大切です。
また、水分は血中のシュウ酸濃度を薄める作用もあります。
砂糖や人工甘味料の入った飲み物は、体内のカルシウム、シュウ酸、尿酸を排出させる作用があり、血中、腎臓にこれらが集まり結晶を作る原因になります。
レモンなど柑橘系果物に多く含まれるクエン酸は、シュウ酸と同じくカルシウムと結合しやすい性質があります。
レモンの皮で水回りの掃除をするとカルシウムが蓄積した汚れを落とせるように、クエン酸は、
●シュウ酸カルシウムの形成を阻害
●小さい結石なら溶かせる作用
●結晶の尖っている部分を丸くする作用
●尿をアルカリ性にする作用
があります。
このため、水分補給の際は水にレモン汁を入れることが有効です。
ライム、オレンジ、グレープフルーツ、かぼす、ゆずなども有効です。
この際のビタミンC摂取は、シュウ酸生成量に影響するレベルではないので、心配いりません。
4、サプリメント摂取
高シュウ酸の害や、低シュウ酸ダイエットに有効なサプリメントは以下の通りです。
ビタミンB6、チアミン、ビオチン
オキサレートダンピングのプロセスには、ビタミンB6、チアミン(ビタミンB1)、ビオチン(ビタミンB7)が使われます。
シュウ酸の蓄積とビタミンB6欠乏には関連性があることも、研究でわかっています。
ビタミンBコンプレックスは、ビタミンB6、チアミン、ビオチンが全て配合されています。
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ビタミンD
ビタミンDはカルシウムの吸収を促進します。
高シュウ酸食で、シュウ酸にカルシウム吸収を阻害されているケースでは、ビタミンDが重要になります。
ビタミンDは日光浴、または食事やサプリメントから摂取します。
ビタミンDサプリは、Dとともに働くビタミンKも一緒に摂取することが好ましくなります。
DとKが両方配合されているこちらがオススメ。
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クエン酸マグネシウム
ビタミンDと同様、現代人が不足しがちなマグネシウムは、シュウ酸塩を溶かす作用のあるクエン酸でキレートされたクエン酸マグネシウムがオススメです。
クエン酸カルシウム
クエン酸カルシウムの摂取は、特定の条件がある人にはオススメできません。
●リーキーガット症候群の人
サプリメントでカルシウムを摂取することにより、遊離シュウ酸が結晶を作って問題を起こす前に消化管内でカルシウムと結合させて尿で排出する方法が推奨されていますが、これはリーキーガットで腸壁の穴が大きくなっている場合結晶を通してしまうので、あまり効果がありません。
ある程度腸の損傷が修復されてきたら、高シュウ酸食の際に一緒に摂取することは有効です。
●マグネシウムが不足している人
カルシウムとマグネシウムは拮抗するため、カルシウムがマグネシウム吸収を阻害します。
マグネシウム欠乏のままカルシウムをサプリメントで摂取すると、マグネシウム欠乏が悪化することがあります。
この二つの問題をクリアしている方にとっては、クエン酸カルシウムの摂取が有益になる場合があります。
食前か食事と一緒に摂取してください。
5、自然塩
シュウ酸の影響でミネラルバランスが崩れることがあります。
ミネラルが精製で取り除かれていない自然塩は、ミネラルバランスを戻すとともに、食事と一緒に摂取することで過剰な遊離シュウ酸と結合し、尿で排出する効果が期待できます。
6、エプソムソルトバス
硫酸塩は、体にとって重金属、過剰なエストロゲンをデトックスする重要な栄養素です。
腸、肝臓、腎臓の表面にはSat1輸送タンパク質と呼ばれる輸送機能があり、シュウ酸塩と硫酸塩は両方この輸送機能を使うため競合します。
そしてシュウ酸塩が1分子入ってくると、硫酸塩が1分子追い出されるということが起きてしまいます。
硫酸マグネシウムであるエプソムソルトは、塩のような粉末の状態で販売されており、お風呂に入れて入浴することで硫酸マグネシウムを経皮吸収できます。
硫酸塩もマグネシウムもシュウ酸塩の害に必要な栄養素なため、経皮吸収で直接血流に補給できる有効な方法です。
硫黄の摂取はMSMも有効です。
7、適度な運動
適度な運動をして血行を促進することは、血流にシュウ酸塩を蓄積させないためにも重要です。
8、サウナ
サウナも血行を促進します。
また、低シュウ酸塩ダイエットによるオキサレートダンピングの際、肌からシュウ酸塩が出てくることもあります。
サウナで汗をかくことは、これを促進します。
オキサレートダンピング注意点
オキサレートダンピングには、不快な症状を伴うことがあります。
特に高シュウ酸食から突然低シュウ酸食にすると、個人差がありますが3日〜2週間以内にオキサレートダンピングの症状が見られます。
症状の例は、
●鼻水
●くしゃみ
●喉の痛み
●耳の痛み
●乾燥した、ざらざらした目
●まぶたの腫れ
●刺すような目の痛み
●かすみ目
●消化器系の不調
●下痢
●便秘
●痛みを伴うざらざらした便
●頻尿
●尿意切迫感
●腎臓結石
●皮膚の発疹
●関節痛
●口蓋または喉の発疹
●歯肉の出血
●唇または舌の口内炎
●外陰部のかゆみおよび痛み
●肩、腰、膝の関節痛
●人差し指、足の痛み
●頭痛
●脈動性頭痛
●耳鳴り
●感情の起伏
●動悸
●睡眠障害
●不安障害
●カンジダ菌ダイオフ
好転反応のようなもので症状は一時的ですが、痛みを伴うものもあり苦痛な場合があります。
このため、オキサレートダンピングのプロセスをゆっくり遅くする必要があります。
シュウ酸摂取の最終目標を100mg /日以下に設定し、5〜7日ごとに 10mg /日 落としていくつもりで食事内容を考えてください。
不快な症状が出る場合は、多少のシュウ酸を摂取することも検討し、変化に適応してください。
高容量のビタミンC摂取は避ける
食事から摂取するビタミンCは心配いりませんが、ビタミンC点滴やサプリメントでの高容量ビタミンCは避ける必要があります。
これは過剰なビタミンCが肝臓のシュウ酸生成を促進してしまうためです。
どうのくらいの容量がいけないのかははっきりしていませんが、2000〜3000mg以上は避けるというのが目安です。
コラーゲンの過剰摂取に注意
カンジダ菌は、コラーゲンを使いシュウ酸の前駆体を生成します。
ボーンブロスのコラーゲンは腸の修復に有効と言われますが、ビタミンB6欠乏の状態でコラーゲンを大量摂取すると、カンジダがそれを結晶化する可能性があります。
こちらも具体的な許容摂取量はわかっていません。
低シュウ酸ダイエットを続ける期間
低シュウ酸ダイエットはどのくらい続ければいいのか?
どのくらいで体内に蓄積したシュウ酸塩の結晶が排出されるのか?
これは個人差があり、はっきりわかっていません。
オキサレートダンピングに詳しいイギリスの栄養療法士、エリオット・オバートン医師の話によると、
シュウ酸塩排出のプロセスは時間がかかる
ということです。
目安として「5年」くらいかかると思っていいようです。
オバートン医師の話によると、
夏にシュウ酸含有量が高い作物が収穫されるものが多いことを考えると、高シュウ酸食は夏だけにすることが自然なのかもしれない。
昔の人はそこまで栄養豊富なものは食べていなかったし、ハウス栽培や外国からの輸入野菜もなかった。
現代は環境毒素などで体調不良が頻発しているため、それを改善させようとして栄養をたくさん摂ろうとする傾向があるが、本来は過剰な栄養摂取は不自然なのではないか?
と、おっしゃっていました。
まとめ
体内にシュウ酸塩が蓄積しているサインと、蓄積したシュウ酸塩を排出する方法、シュウ酸塩排出時のオキサレートダンピングの症状について説明しました。
オキサレートダンピングは不快、苦痛を伴うこともありますが、ひとたびガラスの破片のようなシュウ酸塩の結晶が体内からなくなると、別人になったかのように体調が良くなるということです。
「緑の葉物野菜を中心に健康的な食生活を送ってきたのに、体調が改善しない」という方は、ぜひ一度試してみてください。
エリオット・オバートン医師の夏に採れる作物の話を聞き、すごく納得してしまった私ですが、秋に採れるかぼちゃの種、柿、ざくろ、黒くるみなどが寄生虫に有効ということを知り、
「春夏は毒素のデトックス、秋は寄生虫駆除、冬はオキサレートダンピング」というパターンが自然に沿っているのかな?と考えてみました。
(春は山菜などアクの強い植物が採れるので、デトックスは春から始まるのかなぁ?と。)
シュウ酸について、その害が注目され始めて日が浅いようで、研究や実験も少なくまだまだわからない部分がたくさんあります。
この記事の内容も多少変わることがあるかもしれませんが、ご了承ください。
・プラントベースダイエットをしている人
・ビーガンの人
・緑の葉物野菜をよく食べる人
・デトックスの食事療法をしている人
・慢性炎症の問題がある人
・リーキーガット症候群の人
・結石ができやすい人